９６ 〜S〜 ページ16
お互い部屋着のままAの手を引きダイニングに向かうと、上座に生気の抜けたような青白い顔をした兄貴がほけーっと座っていて…
「か、和くん？どうしたの？」
いつもの偉そうな俺様兄貴じゃないからか、さすがにAも戸惑っている。
智「あぁ、大丈夫だよ。気にしないで。」
ふにゃりと笑った秘書。
「和くん？あのね？」
Aが話しかけても返事をする気力もないのか、一点を見つめたまま動かない。
智「ほら、和也。Aちゃんが用があるんだって。」
和「A…俺のAが…ピュアな天使だったのに…。」
何かの呪文かと思われるような理解不能な言葉の羅列をブツブツと呟いてる。
「和くん？」
兄貴の壊れっぷりに泣きそうになってるAが可哀想で、頭をポンポンとすると上目に俺を見上げる。
「おい、バカ兄貴。来月、泊まりの出張がある。それにAを同行させる。弟子達に婚約者として紹介するいい機会だしな。」
「………はっ？！」
あ、我に返ったか…？
「それまでは手を出さずにいてやるよ。お兄様？」
ニヤリと不敵に笑って、バカ兄貴にワザと挑発的な視線を向けてやる。
和「てめぇに『お兄様』なんか呼ばれたかねぇわ！」
ガタリと椅子をひっくり返して立ち上がり、俺に向かって来ようとするけど執事と秘書に止められる。
「俺もてめぇを兄貴となんか思いたくねぇよ。」
和「そもそも婚約なんて認めてねぇし！」
「あぁ…まだプロポーズも指輪もねぇけど、見合いが成立イコール結婚だろうが。お前、頭大丈夫か？」
和「脳内花畑のてめぇよりはマシだわ！」
「あ？手首真っ赤にさせて鬱血痕だらけになるプレイするような性 癖の持ち主に言われたかないね。俺は大事に優しく抱くのでご心配なく。」
可愛い可愛い恋人を傷つけるような抱き方をして何が楽しいんだ？
何が満たされる？
俺には全く理解ができない。
「翔さん…恥ずかしいよ//」
頬を真っ赤にして俺の袖口を控えめにツンツン引っ張るA。
「…可愛いなぁ。」
真っ赤なりんごみたいな頬にチュッとする。
和「てめぇ！俺の見てる前で堂々と！俺のAが穢れる！離れろ！」
「俺の恋人に何したっていいだろうが。したきゃお前は自分の彼女にすればいいだろ？」
「和くん？そうだよ？私には翔さんがいてくれるし…山岸さんを大事にしてあげてね？」
そうAが言うと、項垂れて椅子に座り、また意味不明な呪文を唱え出した。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 19時
