９５ 〜S〜 ページ15
『据え膳食わぬは男の恥』
昔からそう言われてきたが、一晩耐えて耐えて耐え忍んだ俺は男として恥なのか…？
腕の中に無防備で擦り寄るように甘ったれた可愛い子猫がいて、その可愛いさに身体が反応してても俺は必死に耐えた。
恥どころか国民栄誉賞もんだろう。
あぁでも…
この寝起きのふにゃりとした笑顔が徹夜して耐えた俺へのこれ以上ないご褒美だ。
あまり可愛いくて鼻をパクリと食べると、くすぐったそうに笑って身を竦める。
「…あぁ…もう…お前が可愛いすぎて俺、溶けそうだわ…。」
もう溶けてるかもしれない…。
「…恥ずかしいですよ//」
「可愛いものを可愛いって素直に言ってるだけだ。受け入れろ。」
「もぉ…//」
ピンクに染まる頬を隠すように俺の胸に顔を埋めた。
それも可愛いってコイツわかってねぇのな。
まぁ…結局はAは何をしようと可愛いんだけど。
頭のてっぺんにチュッチュッとキスを落としてると、コンコンと遠慮がちにノックがされて、Aの代わりに俺が返事をした。
「おはようございます。」
どういった表情をすればいいのかと、微妙に緊張感を出してる執事が入って来た。
「お嬢様は…？」
執事の声に、この状況を見られるのが恥ずかしいのか布団に潜り俺にギュッと抱きついてくるから大丈夫と伝えるようにポンポンと頭を叩いてやる。
「もう熱も下がってるし大丈夫だろう。」
「左様でございますか。それはよかったです。朝食の準備ができておりますがこちらにご用意しますか？」
「いや、起きる。今日は仕事がある。」
「かしこまりました。」
深々と頭を下げると部屋を出て行った。
「A。大丈夫だ。」
俺の胸から恥ずかしそうに上目に見上げるAは本当に可愛いくて、思わず額にキス…。
「お前、自分で誘っといてそんなに恥ずかしいのか？」
揶揄うように言ってやると、
「さ、誘ってはないです！」
あたふたと慌てて反論。
ヤベェなぁ…
何をしても可愛いくてしょうがねぇ…。
そうやって可愛い反応するからもっとイジメたくなるんだよ。
「え？袖をキュッと掴んで帰らないでってアピール。あれは誘ってるだろ？潤もきっとお前が誘って昨晩一線越えたって思ってるぞ？」
「え？！やっ…そんなつもりじゃ…。」
「潤もきっとそういう目で見るだろうなぁ。」
「もぉ〜//どうしよう…恥ずかしすぎる…。」
泣きそうな目と声にどうしょもなく加虐心が煽られる俺は相当コイツに堕ちて溺れてる。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 19時
