蝶よ華よ… 【２】 (ページ10)

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あの日から何をする気も起きなくて、自室から出る事もせずにほぼベッドの上で過ごしてた。

私がみんなを振り回して、傷つけているってわかってるのに…

何、悲劇のヒロイン気取ってんのよ！って別の自分に言われてわかってても…。

あの女の人も櫻井さんも和くんも相葉も…

みんなが悪いわけじゃない。

そうじゃない…

周りに当たり散らした自分が許せなくて嫌いなだけ…。

「お嬢様。本日は赤い薔薇でございます。香りもよく大変美しいですよ。」

私が塞ぎ込んだ日の数日後から一輪だけ花が飾られる。

こんな状態の私を心配して少しでも元気づけようと相葉が用意してるものだと思ってたけど、どうも違うよう…。

山岸さんかな？

ちなみに昨日が赤いアネモネ…

一昨日はブーゲンビリア…

色とりどりなら種類も全然違うお花。

新しいお花は一輪挿しに生けられ、昨日まで飾られたお花達は大きな花瓶に移される。

アレンジメントの才能がある山岸さんがお花の茎を切ってセンスよく生けてくれる。

相葉が最初やってたけど、あまりにセンスがなくて見るに見かねて山岸さんがやってくれてる。

「相葉…？」

「はい。」

「それは誰が…？」

毎日毎日聞くけど曖昧に笑って誤魔化す。

「お嬢様はお花がお嫌いですか？」

「嫌いな人なんているの？そんなに綺麗なのに。」

「花は美しいですよね。女性が贈られて喜ばれる気持ちがわかります。」

「相葉はお花贈る相手いないの？」

「ははは。残念ながら…。」

「そう…。」

苦笑いを浮かべる相葉に悪い事聞いちゃったなと…。

こんな仕事してて、ここに住み込みなのに彼女なんてできるはずもないよね…。

「ねぇ相葉？」

「はい。」

「辞めたくなったらいつでも辞めていいのよ？」

私がそう言うと今まで見た事もないくらい悲しそうな顔をした。

「違うの！違うのよ？相葉が必要ないとかじゃなくて、こんな仕事じゃ自分の幸せ掴めないじゃないと…。」

「お嬢様は本当にお優しい。」

「そんな事ないわ…。自分勝手で周りを傷つけてばかり…。」

今だって言葉足らずで相葉を傷つけた。

「残念ながら私には全く予定はございませんし、このお仕事が天職だと思っておりますのでもう少しお嬢様のお側にいさせて頂けませんか？」

「…うん…ありがと…ごめんね？」

「いいえ。とんでもございません。」

にっこり笑った相葉はお茶の用意を始めた…。