４９ 〜N〜 ページ9
「Aの様子は？」
帰宅後リビングに入り、メイドの山岸が俺のジャケットを脱がし…
相葉にはそう聞いた。
「はい。今日も一日中ベッドから出ずに、必要以上にお話もされません。食欲もないとの事で…。」
自分の主がそんな状態で今にも泣き出しそうな相葉。
「…そうか…。」
ソファにふんぞり返り天を仰ぐと俺も大きなため息が出た。
「大野さんに来てもらいましょうか？」
「いや…智にこちらの事情ばかりに付き合ってもらうわけにはいかねぇだろ。」
あいつには将来を考えてる彼女がいるし…
そうそう…な…。
どうするべきか…
青山の事はいくらでもどうにでもできるが…。
「…和也様。」
「あ？」
「実は本日…。」
言い淀んだ相葉は、その後を言うべきかどうか迷ってるようで…。
「何？何かあったのか？」
「はい…櫻井様がいらっしゃいまして…。」
「あ？見合いは断ったはずだろ？何の用だ？」
「…そのお花をお嬢様にと…。それだけでお嬢様に会う事もせずにお帰りになりました。」
相葉の視線の先には一輪挿しに飾られた赤い菊。
「は？意味わかんねぇ。」
わざわざ花を一輪だけ…？
何の為に…？
「つーか、あいつが持ってきた花なんて捨てちまえ。飾る意味も義理もない。」
「和也様。こんなに綺麗に咲いてる花に罪はございませんよ。」
「そうだろうけど…胸くそ悪りぃ。」
しかも菊とか…
葬式の花じゃねぇか。
あの御曹司は何を考えてやがる。
傷ついたAに更に追い討ちをかけるつもりか？
「あいつは絶対家に入れるな。」
「承知致しております。お嬢様をあんな状態にした櫻井様を許してはおけません。」
相葉も内に秘めた怒りを目に映してる。
「でもまぁ…あの御曹司が直接ってわけじゃねぇんだけど…な。」
「え？」
「正確にはあの御曹司の見合い相手の女のひとり…。」
「そうでございましたか…。」
ウンウンと納得したように数度頷くと…
「和也様？」
「あ？」
「お嬢様の救世主は櫻井様かもしれませんよ？」
何が嬉しいのかにっこり笑ってる。
「お前…意味わかんねぇぞ。」
「私の予想ですと櫻井様はまたいらっしゃいます。」
「は？」
「さて…どれほどなのか…。お嬢様の執事のこの相葉、櫻井様のお気持ち…とくと拝見させて頂きます。」
ひとり納得した様子の相葉は独り言を呟くと、『お嬢様の様子を見てまいります』と出て行き、その背中を見送った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
