４７ 〜S〜 ページ7
俺の気持ちは親父に伝わったのか、『好きにやってみろ』とため息混じりに言われた。
さてどうするか？
あのシスコン兄貴も厄介だけど、誤解されたままのAとコンタクト取るのも難しいだろうな。
メイドと執事もいるし、Aに辿り着くまでに前途多難だな。
そもそも面と向かって俺に何かを言えるヤツなら、あの場で問い詰められていただろうし。
攻め手を欠くというか…
攻め方がわからない。
無意識で流れ作業的に、パチンと鋏で花の茎を切り落とし剣山に…
「若先生？そのお花は…そちらで？」
「あ、あぁ！いや…こちらですね。」
様子のおかしい俺に完璧に不信感を抱いてる生徒。
俺があの宣言をしてから、稽古も見合いまがいじゃなくちゃんと純粋に華を習いたい生徒の稽古を任されている。
右腕の袂を左手で避けて菊の花を手に取った。
菊の隣には菖蒲、カサブランカ、ガーベラ…
生徒さん達に多くの花から選んで自由に創造して欲しいから、できるだけ取り揃えておく。
「…。」
ふと視界に入った花を見て俺がこの先すべき事が見えた気がして…
そうか…
会ってもらえないのあれば…
よし！
「佐々木さんは実に素晴らしい。宮城さんもお美しいですよ？」
俺のモットーは褒めて伸ばす。
「若先生のご指導の賜物ですわ。」
「いえいえ。皆さまのセンスと才能ですよ。」
にっこり笑ってとにかく褒め褒めて褒めまくる。
「皆さまがどんどん上達なさるので次回はどんな創作をしてくださるのか、私はとても楽しみです。」
生徒を褒めまくって稽古を切り上げ、出口正面につけられた車に乗り込む。
「潤。」
「はい。」
「花屋に行ってくれ。」
「は？」
「だから、俺らが贔屓にしてる花屋あんだろうが。」
「あぁ…はい。かしこまりました。」
稽古を終えたばかりの俺が花屋に行きたいとう意図が分からず困惑した表情を浮かべるも頷き車を発進させた。
潤が車を走らせてる間、俺はスマホを取り出し検索をかける。
「なぁ…？」
「はい？」
「Aの誕生日っていつだ？」
「いや私は存じ上げておりませんが…親父なら知ってるかもしれません。」
「…そうか…。」
じゃぁとりあえず今日はそっちは無理だって事だな。
「若？一体…？」
「ん〜？」
「いや…『ん〜？』って…。」
「華道家なら華道家らしく……な？」
「…はぁ…。」
スマホで検索しながら潤の納得してない気の抜けた返事を聞いた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
