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「A〜。」
玄関に踏み入れた途端に真正面から走ってきた和くんに抱きしめられる。
「もぉ〜あんなクソ御曹司の家に行ったなんて聞いて和くん心臓止まるかと思ったよ。」
「お見舞いに行ったくらいで…そんな大袈裟な…。」
「熱がある時の方が男は危険なの！理性はきかないし…。で？大丈夫なの？無理矢理とか『大丈夫だから』」
そんな事…
今後あるのかもわからないし…。
「本当に？」
何をそんなにうたがってるの？
「うん。本当よ。」
「はぁ〜…よかった。和くんのAがあんな男に穢されたらどうしようかと思ってたんだ。そんな事になったら和くんショック死する…。」
痛いくらいにギュ〜ッて抱きしめる和くんの背後では智くんが苦笑いを浮かべてる。
「和くん？今日は一緒にご飯食べられるの？」
和くんの背中をポンポンと叩くと、身体を離してくれて。
「もちろん。」
嬉しそうににっこり笑った。
最近あまり色々あって仕事が忙しいらしく、和くんが帰って来るのは私が寝た後。
ご飯は翔さんがお付き合いしてくれてたから、ひとりぼっちで寂しい晩餐なんて思いはしなかったけど。
身体が離れたと思ったら、今度はギュッと手が握られてダイニングに向かって歩き始める。
「和くんとご飯食べるの久しぶりだね？」
「だな。ごめんね？寂しい思いさせちゃって。」
「…うん。」
翔さんは私にとって当然特別ではあるけれども、和くんも特別な存在で。
何日も顔を合わせないのはやっぱり寂しい。
ダイニングテーブルの椅子を引いてくれたのも和くんで私を座らせると自分は向かい側に回る。
和くんの椅子を引いてお世話をするのは山岸さんで、私の背後には相葉が立ち、和くんがチョイスしたワインを注ぐ。
「今日はAが大好きなハンバーグにしたよ？」
「それは和くんの大好物でしょ？」
終始ご機嫌な和くんはにこにこ笑って正面の私を見てる。
「相葉。智くんは？」
キョロキョロとダイニングを見渡すけど、さっきまでいた智くんがいない。
「別室にお食事をご用意させて頂いております。」
「え？そんなの寂しいじゃない。ここで一緒に食べましょうよ。」
「A。和くんとふたりは嫌なの？」
途端に不機嫌になって眉間に皺を寄せた。
「違う。そうじゃなくて！ひとりのご飯ほど寂しい事はないから…。」
「…。」
和くんは何かを察してくれたのか、
「相葉。智をここに呼べ。」
そう相葉に告げた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
