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『どうぞ？』と松本さんが案内してくれたのは窓が大きい事で燦々と光が射し込む明るいリビング。
黒い大きなソファとガラステーブルが、ふかふかなラグの上に置かれていて、これまた大きなTVが壁に掛けられている。
無駄な物が一切ない黒で統一されたモダンでスタイリッシュなリビング。
そのソファに座るように促され…
「只今、お茶をご用意致しますので。」
「あ、松本さん？どうぞお気遣いなく。」
お見舞いをテーブルの上に乗せて松本さんにどうぞと差し出す。
「こちらこそただの疲労で余計な気を使わせてしまって申し訳ないです。」
眉を下げて申し訳なさそうに頭を下げた松本さんがお見舞いの籠を受け取ってくれてキッチンの方に向かって…
「A様？」
ハッとしたように振り返り…
「はい？」
「若はりんごがお好きです。剥いてくださいませんか？」
にっこり笑ってそう言った。
「A様が剥いてくださったりんごをお食べになったら若もきっとすぐに元気になります。」
美男子に笑顔でそんな事言われちゃったら断る事なんてできなくて…
キッチンにお邪魔して手を洗い包丁とまな板を借りてりんごを剥く。
「うさぎりんごとは…若も大層お喜びになる事でしょう。」
「子供っぽいって怒らないかしら？」
私が風邪をひくと、お母さんがりんごをうさぎの形に剥いくれていて、子供の頃はそれが本当に嬉しかった。
「いえ。若は喜ばれると思います。」
塩水に晒したりんごを松本さんが用意してくれたお皿に盛り付けて。
「若は寝室でお休みになっていらっしゃいます。こちらをお持ちになって若についてあげてください。風邪ではないので移される心配はありません。」
トレイに乗せたりんごとフォークを差し出し、
「寝室は廊下に出て右側のドアです。」
って…。
反射的にトレイを受け取ったはいいけど、
「松本さん？私が…ですか？」
私が勝手に寝室に踏み入れてもいいのだろうか？
そもそも翔さんはここに入れたくなかったっぽいのに…。
「はい。私はこちら待機しておりますので。」
にっこり笑って当たり前に言う松本さんに反論できなくて、トレイを持って廊下に出た。
薄暗い廊下はシーンと静まり少し冷んやりしていて、家の中なのに寂しい。
今日は体調が悪いから松本さんがいるんだろうけど普段、こんな家にひとりで住んでるなんて…
と、ひとりの翔さん思い、勝手に私が寂しくなった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
