７４ 〜S〜 ページ34
「若。失礼します。」
午前中の稽古を終えて、会場を出ようとして車に乗り込むと、潤が俺の額に手を当てた。
「…やはり。」
「あ？なんだよ。」
「熱があります。今日はこのまま病院に行って休養取って頂きます。」
「あ？お、おい、潤！」
俺の意見を聞かずして、胸の内ポケットからスマホを取り出しドアを閉めた。
外で電話で何やらやり取りをして戻った潤が車を発進させる。
「このまま病院に向かいます。」
「大丈夫だって。俺はそんなヤワじゃねぇ。」
「ダメです。あと、A様にも今日はお会いできませんので。」
「はっ？！何で？！そこまで体調悪くねぇよ！」
Aに会えない方がよっぽど具合悪くなるわ！
「もし風邪だったとして…A様に移したくはないでしょう？彼女の苦しむ姿を見たいのですか？」
「だから！風邪じゃねぇって！」
「まぁ…疲労が重なった結果でしょうね。身体が休めと信号を出してるんですよ。」
確かに…
毎日足しげく通う事で無理をしてないって言ったら嘘になって…。
でも多少無理をしてでも会いたいものはしょうがない。
「やっぱ一緒に住むかなぁ…。」
「お付き合い始めた当初からそう仰っていたのに、ご自宅へはご招待されないのですね。」
「…あぁ…まぁ…。」
だってよ？
俺、一度家にAを入れたら絶対抱くし…
そうなったら確実に帰せなくなくなるし…
Aは初めてだから優しくしてやりたいのに、自分のテリトリーに入れたら暴走して止まらなくなりそうで…
閉じこめるとか犯罪じみた事までしそうな自分が怖い。
初めてなら綺麗な思い出としてAに残してやりたい。
「ご用意された避妊具も役立たずみたいですしね？私が頂きましょうか？」
「うるせぇな！第一、お前にも女いねぇだろ？必要ねぇじゃねぇかよ！」
「張り切って3箱もお買いになったのに…。」
「うるせぇってば！」
ガツンと運転席の椅子を蹴る。
「お前な？そんなタイミングがどこにあったよ？」
Aの家でなんてできるはずもないし…
毎日Aに会う為に、休み返上で稽古してるから泊まりなんて行けるはずもなくて…。
「なら来月の出張に同伴して頂いたらいかがですか？」
「え？」
「一緒に過ごせるように手配致しますが…。」
「マジか！もぉ〜潤くん大好き！」
「なので今日は大人しくお休みになってくださいね。」
「了解。」
俺の頭の中は来月の泊まりの事でいっぱいになった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
