５９ 〜S〜 ページ19
恋い焦がれた俺の花を腕に抱き…
その香りと甘さに誘われて口付ける俺はさながら蝶のようで…。
重なっていた唇を離すと、名残惜しい気持ちが後を引き、離れたくなくてコツンと額同士をくっつけた。
こういう甘い雰囲気に慣れてない俺以上に、きっと不慣れなAは真っ赤な顔をさせてうるうると俺の目を見ている。
「やっぱお前可愛いな。」
「〜っ//」
「キスも初めてだった？」
額をくっつけたままだからか頷いたのは微かで。
「俺がお前にとっての全てにおいて最初で最後の男か。」
「…ごめん…なさい。」
「うん？何で謝る？」
「あの…その…そういった事に不慣れで…どうしたらいいかとか…その…。」
視線をキョロキョロと動かし、しどろもどろに話すAはもう…
「マジで…ヤベェだろ…。」
腰に回してた腕をグッと引き寄せ、俺とAの距離がゼロになる。
くっつけてただけの唇に物足りなくなって…
唇の間から覗かせた舌でチロチロと上唇を舐めると、大袈裟にビクリと身体を震わせる。
薄っすら目を開けると、頬を真っ赤にして必死に俺についていこうという健気さ…
着物の合わせの部分をギュッと握って俺に縋る仕草…
たまんねぇ…
マジでこいつは素で男を煽り過ぎだろ？
兄貴がこの歳まで囲ってきた気持ちを理解して…
「兄貴の次は俺の檻に囲われろ。」
こんな可愛い自分の恋人を他の男の目に触れさせたくねぇ…。
この無垢で純粋…
そして極上に美しく可愛いらしい花を俺だけが独占したい。
時間を忘れて夢中で口づけてると、
「んん…。」
明らかに息苦しそうな声がして、ヤベェ…初心者相手にやり過ぎたと唇を離した。
『はぁはぁ』と必死で酸素を取り入れようとしてるAを抱きしめ、背中を撫でてやる。
「悪いな。お前があまりに可愛いもんだからブレーキ壊れた。」
「…い…ぇ…。」
「ただこんなのは子供騙しで序の口だ。」
「えっ？！」
「お前が悪りぃんだぞ？一カ月も待たせるから…。」
会いたくて会いたくて堪らない気持ちが、抱きしめた事によって爆発してもそれは俺の所為じゃない。
「だって…あの……もぉ〜どうしよ。」
パニクっていっぱいいっぱいになったのか、顔を隠すように俺の肩に凭れた。
…可愛い…。
俺もしっかりと抱き止め、ゆっくりゆっくり頭を撫でてやりながらこめかみにチュッとキスをした。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
