１８ 〜J〜 ページ18
二宮様が出て行った開け放たれた障子をしばらくぼんやりと見ていた若。
「若？」
俺が声をかけるとハッと我に返って。
「何なんだよ、あの女。俺が受け止めてやったのにお礼を言うどころか稽古も受けずに逃げるとか。この俺のマンツーの稽古だぞ？ありえねぇ！」
何かを俺に悟られないように早口でまくし立てるように言った。
でもね？若様？
俺はそれこそ物心ってものがつく前からあなたと一緒にいるんです。
俺の目は節穴じゃないので誤魔化せませんよ？
「今までのどの生徒様よりもお美しい方でしたね。」
「…あ…ま、まぁな…うん…。」
ククク…
照れて頬が赤いし…
そもそも女の子を庇うなんて事をする人じゃない。
俺の主である若様は、ヤル事ヤッてはいるけど、それは男の生理的欲求の為だけで恋愛の延長線上にある…
つまり思い合い、愛し合う行為は経験がない。
恋をした事がない…
恋を知らないって言い方がが正しいのかな？
だから、その手に関してはかなり初心い反応を見せたりする。
「若様。」
開け放たれた障子の隙間に見えたのは、いつの間にいたのか俺の親父で。
「なんだよ。松本まで…何しに来てんだよ。暇人。」
「今回のお見合いのお話は進めてよろしいようですね。」
「は？見合い？！」
やっぱな…。
なんか引っかかる物があったけど、そういう事だよな…。
そもそも家元は奥様ラブな人で愛人なんてありえない。
「そうです。旦那様が若様がお好みになる女性を今回お探しになりました。若様がそう仰ったのでしょう？」
「言った！確かに言ったがこんなのあるか？見合いじゃねぇ！試すような事すんな！」
「見合いと言ったら素直に来ないでしょう？それに先方のお嬢様はお華を習いたいと事でしたので。」
冷静に淡々と正論と事実だけを言う親父と、パニクって怒鳴ってるだけの若。
若に分はない。
「若様。」
「んだよ！」
「お相手にはそんな乱暴な言葉使いはいけませんよ？女性には常に紳士で優しくしないとフラれてしまいます。」
「う、うるせぇ！俺をフル女なんていねぇんだよ！そんな女はこっちが願い下げだ！」
あ〜あ…若…
親父に完璧に遊ばれてる。
「潤。」
「はい。」
「若様を二宮様のお屋敷にお連れしろ。」
「え？」
「はっ？！俺は行かねぇぞ！」
「若様。お見合いでのアプローチは男性からが鉄則です。」
「知らねぇよ！！」
若の怒鳴り声が別宅に響いた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月16日 15時
