73.the Accident ページ34
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二日目の劇はつけまつげが取れること無く(何だか昨日より観客が多かった気がするが)無事に終わり、それからはクラスに戻って仕事をしたり、木南と一緒にお化け屋敷に行ったりと、俺はやっと高校生らしい文化祭を楽めた。……午後までは。
「ふう……今日は今までで最高の出来だぜ……」
「ウン、すっごく可愛い! 頑張ってネ!」
「あ、ありがとうございます……」
そう、いよいよ女装コンテスト本番だ。木南の一件も終わったし姫での出場で良いんじゃないかという話も出たが、それじゃ面白くないとメイク担当の先輩と会長が揃って反対し、俺はテスト女装の時の格好をしている。
先輩のメイクは相変わらずの高クオリティだ。生徒会室がコンテスト出場者の控え室なのだが、周りを見ても、きっと優勝が狙えるだろうと自分でも思った。(ここまで来たら優勝を狙うしかない。そうじゃないと俺が報われない)
「か、かおるん……かわ、かわいいいい!! これは優勝間違いナシだよ!!」
「ちょっとトイレ行ってきます」
「相変わらず冷たいんだから〜。太陽がどれだけ暖めても服を脱がない旅人が居るなんて……」
「……この場合どんなに北風に吹かれても暑い暑いと全裸で居る旅人だろう」
「何言ってるのなっちゃん!」
抱きついてきた会長をするりと躱し、後ろ色々と何か言う声が聞こえるがそれも無視し、生徒会室を出た。行く先は勿論トイレだが、前不良に絡まれた所なので良い気分はしない。
でもここが一番近いし、流石にもう奴らも居ない筈だ──そう思いながらドアに手を掛けると、中から声が聞こえた。
……文化祭とはいえ、人が居る中に入って行くのは少し気がひける。少し待つかと場所を移動しようとした、その時。
「やめて下さい!!」
ドアの向こうからはっきりと聞こえたその悲鳴に、俺は足を止めた。
……今、『やめて下さい』と確かに言った。そして、この場所──。過去の自分の経験と重なり、何が起こっているかすぐに予想がついた。念の為扉に耳をつけると、聞こえるのはいつかのいやらしい声。最悪の気分だ。
……ここで俺が出ても大丈夫だろうか。いや、俺は生徒会役員だ。放っておく訳にはいかない。腕に自信がある訳ではないが、ここならいざとなれば助けも呼べる。
以前の恨みもあるし、いっそボコボコにしてやろう──意を決して、俺は扉を開いた。
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←72.如月叶人2
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます!ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´_`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…!! (2017年9月10日 22時) (レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL?は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください!待ってます! (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか? (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/chiy1/
作成日時:2016年11月5日 12時