59.本番に問題はつきもの ページ20
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(如月と夏目のアクションシーンは、こいつらどこかの芸能事務所に入っているんじゃないかと思われるくらい見事なものなのだが、語っているといつまでも話が進まないので省略させて頂く。……ただ単にそれを表現する力が無い言い訳である)
｢おのれ……いつか呪い殺してやる｣
魔王が苦しげにそう言ったかと思うと、突然煙が出てきて、それは魔王と魔王の城と共に消え去った。
薫姫は呆然とその様子を見ていたが、執事に駆け寄りぎゅっと抱きついた。執事も、姫をきつく抱き締めた。
｢良かった……無事で本当に良かったです！｣
姫は嗚咽を上げ、目から大粒の涙を流した。(本当に泣いてはいないが、そういうことにして欲しい)
そして小さな掠れた声で、なんと姫は、一言言ったのだ。
｢……あ、りが、と｣
｢……姫、今なんと……！｣
執事はがっと姫の肩を掴んで、その顔を見た。が、しかし、如月はそのまま固まってしまった。
柏木のつけまつげが、取れかかっていたのだ。
本来なら、口の利けない姫がついに声を出せたと感動し、その声で執事に｢良ければ私と結婚して下さいませんか｣と想いを伝えるという、なんとも少女漫画的ハッピーエンドなのだが、ここに来てまさかのアクシデントだ。
ただの舞台の劇なら、それでも普通に続けられただろう。しかし今回は違う。視聴覚室でも中継をしているからだ。
体育館では双眼鏡でも持ち込まない限り出演者の顔がズームされることは無いが、視聴覚室の放送はカメラを使っている為多少画面操作をする。今はクライマックスだから、きっと二人の顔はスクリーンいっぱいに表示されている筈だ。
つけまつげが取れている人を見るのは結構笑えるが、役者としてはとても笑えない。柏木は気づいていないようだ。
如月はどうしようかと、頭をフル回転させる。そして、ぱっと、良い考えが浮かび上がった。
次の瞬間、如月は──柏木に、キスをした。
ステージの正面に設置してあるカメラから柏木の顔を隠すように覆い被さり、顔に手を添えるフリでまつげを元に戻す。柏木は何が起こっているのかわかっていないようだった。観客も、突然のキスに目を剥いている。
そして姿勢を戻したかと思うと、さっきまでと同じように演技を続けた。
｢……声が、出るようになったのですね……！｣
(あ、続けるんだ)
(今の何だったんだ)
……こうして、観客と柏木を置いてけぼりにしたまま、生徒会公演の幕は閉じたのだった。
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます！ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´＿`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…！！ (2017年9月10日 22時) (
レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL？は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください！待ってます！ (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか？ (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作者ホームページ：http://nanos.jp/chiy1/
作成日時：2016年11月5日 12時
