ep.139 ページ42
.
ボタンを一番上まで留め、ネクタイを巻いたところでAは深くため息をついた。
痩せてしまってみすぼらしい体は、シャツから骨が浮き出て見えるほどだ。
身体の線を隠すようにセーターとローブを着込み、Aは寮の階段を降りた。
談話室から出ると小さな花火が目の前で弾けて消え、Aはふっと息を漏らして大広間へ駆け出した。
"お楽しみ花火セットは5ガリオン！特大ドラゴン花火付きは10ガリオン！"
"
廊下も大広間も酷い有様だった。
そこらじゅうで爆発が起き、壁や床は煤や火花の文字まみれ。
しかし、教師たちは素知らぬふりでアンブリッジが処理に駆け回るのを見ている。
フレッドは少し離れたところから、満足げに騒ぎを眺めていた。
「……退学になるわよ」
「そう、
予想外の答えにAはひゅっと息を飲み、フレッドの顔を見上げた。
何かを綺麗さっぱり洗い流したように晴れやかな表情に、数歩後ずさる。
「私もつれていって」
フレッドは緩く、しかし固い決意を秘めた目で首を横に振った。
目頭が熱くなり、唇が震えるのを感じた。
「A、きみは何にだってなれる。まだ人生を諦めるには早すぎると思うぜ」
言い返そうにも言葉が出ず、Aはただ涙を流しながら腕に爪を立てて例えようもない痛みを噛み締めていた。
人生の全てが彼で、彼がAの人生なのに。
ピアスをくれたときのフレッドの顔が鮮明に蘇り、また涙が溢れた。
「もう行くよ、ごめんな。心から愛してる。」
それからフレッドは優しくキスをして、箒に乗って飛び去った。
火花の隙間からひらひらと落ちてきたまっさらな紙を指でなぞると、"浮気はナシで頼むぜ"というメッセージが現れた。
Aは丁寧にメモをローブのポケットに入れ、ゆっくりと瞬きをした。
昼食の時間には遅いのに、大広間は生徒で溢れ返っていた。
みんな顔を寄せあってこそこそ話しをしていて、時おり ウィーズリー だとか 花火 だとかいう単語が聞こえる。
「A！あなたも一緒に行ったのかと…」
反抗的な笑顔を隠しきれていないハーマイオニーに曖昧に笑うと、Aは席に着いてサンドウィッチに手を伸ばした。
その目に涙の名残を見つけたハーマイオニーは、何も言わずにそっと雫を人差し指で拭った。
「あまり思い詰めないでね…一生の別れじゃないもの」
Aは赤くなった目で柔らかく微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マニ。(プロフ) - ちとせさん» ✉️。こんにちは！とても面白いです！もしよろしければ一緒にボードで会話したいのですが嫌じゃなければ💦、これからも更新応援します💝 (2月8日 12時) (
レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
ちとせ(プロフ) - くろみさん» ただいまです〜♡お互いもうすぐスタジオツアーでしょうか！？全力で楽しみましょうね〜〜🪄︎︎✨ (10月30日 23時) (レス) id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
ちとせ(プロフ) - お返事遅くなりすみません(>_<)長い間お待たせしました！完結まで見守っていただけたら嬉しいです♡ (10月30日 23時) (レス) id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
ちとせ(プロフ) - ダリアさん» ありがとうございます、励みになりました！どうぞ完結までお付き合いください♡お返事遅くなりすみませんでした(>_<)💦 (10月30日 23時) (レス) @page8 id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
くろみ(プロフ) - おかえりなさい♡私も再来月スタジオ行くので双子モチベ上がってます✊💞ゆっくりで良いので更新楽しみにしてます🥲 (9月22日 23時) (レス) id: ad8712394d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちとせ | 作成日時：2023年2月20日 15時
