ep.63 ページ15
.
夜も深くなり、Aたちもすっかり寝息を立て始めた頃、アーサーは慌てて子供たちを次々叩き起こした。
「今すぐここから出るんだ！」
「ジニー、ジニー起きて！」
「おはよう……」
「おはよう、ほらこれあなたの上着……」
上着を羽織り、言われるがまま外に飛び出すと、お祭り騒ぎだった人々が皆泣き叫びながら逃げているのが見えた。
「酷い……」
ハーマイオニーが見上げた先には変な形によじれた人間が四つ、宙に浮いていた。
そのうちの二人は幼い子供で、ジニーは嗚咽を飲み込むように口を押えた。
「向こうに行くと森がある、みんなそこで身を潜めなさい。絶対に一人で行動するな！」
アーサーに背中を押され、Aはフレッドに手を引かれて走り出した。
燃え上がるテントに、飛んでくる火の玉。
叫び声に交じって時折聞こえる、不気味な歌のようなものがよりいっそう恐怖を煽った。
人混みの隙間から黒いローブと不気味な仮面が見えた時、Aは はっ と息を飲んだ。
「
「えっ？」
「死喰い人……例のあの人のしもべ……」
無意識のうちに左腕を押えて立ち止まってしまったAを抱き上げ、フレッドは父親に言われた通りに森の深いところまで走った。
「ここまで来れば大丈夫だろ……」
「みんなはぐれちゃったわね……無事かしら……」
カタカタと震え続ける細く小さな体を抱きしめ、フレッドは 大丈夫 と刷り込むように何度も呟いた。
「私、やだ、どうしよう……」
「おまえは死喰い人じゃない、そんなダサいタトゥーに左右されてたまるかって話だ……そうだろ？」
Aは死喰い人に襲われるという恐怖よりも、自分が本来ならあちら側の人間であるということに対する恐れが強いようで、フレッドの体にすっぽり包まりながら、自分に暗示をかけるかのように「私はちがう、私じゃない」と繰り返した。
そんな彼女を安心させるように、フレッドはずっとAを強く抱きしめて、頭を撫で続けていた。
浅い呼吸が段々落ち着き、Aが深く長い息を吐くと、周りで同じように息を潜めていた人たちが声にならない悲鳴をあげ、フレッドは空を見上げた。
真っ黒の空には、オーロラのような緑の光が広がっていて、その中心にはAの左腕にあるものと同じ印が大きく蠢いている。
Aはとうとう泣き出してしまい、フレッドは彼女の視界を遮るように頭を自分の胸元に押し付けた。
「見なくていい。全部、全部悪い夢さ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちとせ(プロフ) - Rrrrさん» コメントありがとうございます。はい、もちろん……(；；)ただ(私の解釈での)ハッピーエンドにはなりますのでご安心ください(？) (3月9日 9時) (
レス) id: 12c0d6c6fa (このIDを非表示/違反報告)
Rrrr(プロフ) - 最近読み始めた者なのですが救済等は無いのであれば、フレッドもちゃんと…? (3月9日 6時) (レス) id: eeb020f16b (このIDを非表示/違反報告)
赤田 - すごい、悪役令嬢的なことになっても、吹っ飛ばしてる、すごい。 (2023年3月8日 19時) (レス) @page45 id: 3d88a3b324 (このIDを非表示/違反報告)
ちとせ(プロフ) - 村民さん» ありがとうございます♡♡読み返していただけたなんて、とっても嬉しいです(><)フレッドくんのかっこよさの10000分の1も表せていない気がするのですが、これからもお付き合いいただけると嬉しいです( ¨̮ ) (2023年2月20日 12時) (レス) @page48 id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
村民(プロフ) - 初めまして！好みのお話で最近フレッドにハマった事もあり1日で何度か読み返させてもらいました！続きも楽しみにしてます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ (2023年2月20日 5時) (レス) @page47 id: 82c45efafd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちとせ | 作成日時：2023年2月13日 13時
