救えるのは、救ってくれたのは ページ41
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カチャリと扉を押す。
第9ターンがスタートした。
生き残ったんだ。
チシヤの言葉を疑う気持ちは1ミリもなかった。なかったが故に、ウルミ達を責める気持ちにはならない。
ただただ、呆然と「本当に嘘をつかれたんだ」とどこか現実離れした感覚があるだけ。
「…良かった。」
隣のドアが開き、少しだけ焦ったようなチシヤが顔を覗かせた。
続けざまに紡がれた言葉、その声音に隠されたほんの少しの安堵に心がキュッと喚いた。
「あ…!え、え…?」
不思議そうなイッペーくんが、こちらも「良かった…!」と言葉に気持ちを滲ませて私を指さす。
どうやら本当に騙されかけていたみたい。
「ありがとう、チシヤ」
「……どういたしまして。」
ふわりと優しく微笑み、地下室へ移動しようとする彼。
後ろから視線を感じて振り向けば、血走った瞳をしているウルミがお菓子を噛み砕いた。
「……私を救えるのは貴方じゃない」
小さい声でつぶやく。
彼女は聞こえたのか、不自然な笑顔を形作り私を凝視したままだ。
私の一歩先をゆくチシヤが、立ち止まった私を見つめる。
私を救えるのは、救ってくれたのは……。
「貴方は、誰も救えない。誰かを陥れようとする限りね。」
もう、彼女からの返事は何もいらない。
ただ黙って地下室へ移動するのを、じっとウルミが見ていた。
彼女の破滅がここから始まる。
ただ何となく、そう思った。
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時