もう裏切らないで ページ31
・
【本当にクラブなのか?…嘘をつかれていないか?】
夢と現実の違いは何だろう。
疲れから度々眠りかけ、ボーシヤや過去の母親の言葉、首輪の爆発音が聞こえた気がして目が覚める。
そこにはいつだって、クッキーをパリパリ食べてるチシヤがいるけれど。
起きてから、どちらが夢なのか分からなくなる。
今このゲームにいる私こそが夢で、詰られてる場所こそが現実のような。
夢ううつの狭間を彷徨っていると、決まってチシヤは言うのだ。
「クッキー食べない?」と。
「うん、大丈夫だよ。」
「そう?そんなんじゃ持たないよ最後まで」
……最後、か。
何ターンも終わり、格段に人が減った。
こんなゲーム誰かがボロを出すまでいつまで経っても終われないと思ってたけど、追い詰められた人間は怖いものだ。
「……チシヤ。」
「うん?」
ガラガラ、戸を開けて入ってくるのはバンダと組んでる男。
マツシタだ。
「私、ちゃんと今ここにいる?」
「……どうしたの?」
チラリとマツシタがこちらを向いた。
ボーッとした様子の私に「変な女がいるな」と鼻で笑った。考えている事が分かりやすい。
「大丈夫だよ、A」
「……大丈夫、か。」
大丈夫、大丈夫。
言い聞かせて来たけど、現状はちっとも大丈夫じゃない。
ボーシヤの声がうるさい、自分のマークが分からなくなる。
「チシヤ、私のマーク何だったっけ…?」
「………A、」
ターンが変わる事に何回も何回も尋ねてしまう。
「ハート…だったっけ?…違った?ダイヤ?」
眉に皺を寄せたチシヤを見て、間違ってしまったと悟る。
「A、クラブだよ。おいで。」
腕を寄せられて彼の体の中にすっぽり埋まる。
暖かい体温が心地よくてまた眠ってしまいそうになり、体を預けた。
「楽しそうだな。」
といきなり目の前でイチャイチャしだしたように見える私たちを、マツシタくんが詰るのが聞こえる。
彼の体温を分け合いながらそっと思う。
1人は怖い。
暗闇の中を走っている感覚がして、トンネルの出口が見えないから。
でも、いちばん怖いのはきっと。
大切な人が出来たあとの喪失、孤独なのだと。
こんな痛みを知るくらいなら最初から誰のことも愛さない方がいいのだと。
大事な人が出来る度に弱い自分が叫ぶのだ。
もう、裏切らないで、って。
227人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時