お守り ページ5
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chishiya side
「ヤバいなぁ、はぐれてもうた」
唇を噛んだクイナが悔しそうに零す。
言うまでもない、Aの事だ。
散り散りになって逃げろ、というアリスくんの声が聞こえたと思ったら、いつの間にか彼女の姿が消えていた。
この広い渋谷で再度合流できるか、
そもそもこれは一体何なのか。
「ボーっとしてたら死ぬで！」
隣で力強いクイナの声が聞こえる。
どうやら向かい側の車二台に姿を隠したアリスくんとウサギちゃんに呼びかけているようだ。
叫んだ瞬間、咎めるように降り注いだ銃弾に慌てて身を隠す。
「どっから撃ってきよんねん」
恐怖よりも怒りが勝るのか、苛立ちながらそう言ったクイナ。
今は自分のことだけを考えろ。
Aに偉そうに言っておきながらブーメランだな、彼女の安否が気になって仕方ない。
ふと上からバラバラバラ、と変な音が聞こえ、クイナと2人で空を見上げる。
「スペードのキング」
目にした光景をそのまま口に出すと、絵札の柄を引っさげた飛行船が建物の周りを器用に移動していく。
成程、あの下がゲーム会場になるのかな。
目星をつければあとは簡単。
この飛行船のエリアから逃げればいいだけだ。
「はいこれ、お守り。」
未だに上を見上げるクイナに、ポケットに入れていた物体を渡した。
何も体力勝負でバカ正直に逃げ続けることは無い。
あちらが武器を使うならコチラも対抗すればいいだけの話。
向こうも同じ、生身の人間なんだから。
「いざと言う時に使えばいい。」
自分用に作った同じ爆弾を揺らして見せると、クイナの強ばっていた顔がいくらか緩和した。
「Aにも渡したかったなぁ…」
Aの為にもうひとつ作った爆弾の存在をポケットで感じていると、タイムリーにクイナが呟く。
そうだね。
同意すれば、騒がしい足音と再開した銃声に音の方向を見やった。
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作者名：みりん | 作成日時：2023年3月13日 23時
