先生っぽいことも言えるんです。 ページ26
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今日は約束通りアトランティカ記念博物館に写真を返しに来ていた。
休日なのに朝から早起きして来なきゃいけないなんて……なんて拷問だ。
「うわー。すげぇ。中はこんな風になってんだ。」
「伝説の海の王の像か……海の魔女以外にも海底にはいろんな偉人がいたんだな。」
「この王様、なかなか鍛えてるじゃねぇか。」
『マジカメにあげよ〜。』
ボクも含めてみんな言いたい放題喋っていると、先に着いていたらしいアズールが来た。
「みなさん。ようこそアトランティカ記念博物館へ。
本日は、『モストロ・ラウンジ』の研修旅行……という名目で貸切営業となっておりますのでゆっくり楽しんでいってください。」
「あっちに人魚姫の銀の髪すきとか展示してあるよ。」
「さっきパンフで写真見たけどあれどう見ても櫛じゃなくてフォークじゃね？」
「ふふふ……陸の人間にはそう見えるかもしれませんね。」
みんなは展示物を見にジェイドとフロイドに着いて行った。
ボクは何度も来たことがあるし、めんどくさいのでココにいることにした。
それに、まだやることがあるしね。
「先生は行かないんですか？」
『アズールがちゃんと写真を返すまで見てないといけないからさ。』
「疑り深いですね。ちゃんと戻しますよ。」
そう言って写真を壁にかけるアズール。
加工もしていない、まんまるのアズールが写った写真だった。
「昔の写真を全て消去すれば、僕がグズでノロマなタコ野郎と馬鹿にされていた過去も消えるような気がしていたんです。」
『…………海の魔女は、悪いことをしていた過去を隠さず、それを覆すほどの働きをした。
彼女のようになりたいアズールが、過去の自分を否定し続けてもしょうがないでしょ。』
「……！」
図星だったのか、驚いた顔をするアズール。
そんな彼を優しく抱きしめて、話を続ける。
『過去にも人一倍努力してきたから、今のアズールがいるの。それまで否定したら、何も残らないよ。』
「……ふっ。そうですね。」
アズールからそっと離れ、ベンチのあるところへ行こうとすると、展示物を見ていた子たちが戻ってきた。
「アズール、これよくわかんねーから説明してー。」
「おい、A！お前も来るんだゾ！」
『げ、なんでボクまで。』
「いいでしょう。僕のツアーガイド代は高くつきますよ。」
…………ま、一件落着。かな。
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作者名：林檎と珈琲豆 | 作成日時：2022年8月8日 15時
