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6話 ページ6

高専に戻ると、担任の夜蛾先生が仁王立ちで待っていた。私達4人は顔を見合わせて微笑み、全員が正座した。お説教の始まりである。ゆっくりと叱られる体勢になった私達を、先生は一度見回して、低い声で言った。これは……かなりキレている。


「この中に、『帳は自分で降ろすから』と補助監督を置き去りにした奴がいるそうだな」
「先生!犯人探しはやめませんか」


耳に腕が当たる程ピシッと腕を伸ばしながら、五条は文句を垂れる。私と硝子と愛しの傑は、素知らぬ顔で彼を指差す。……私は知らない、何の責任もない。五条が補助監督を置いていった。私は何も知らない。

一拍置いて、ゴツンと鈍くて固い音。先生の鉄拳が五条の頭に飛んだ。正直、あの御三家の五条を躊躇なく殴れる胆力は、少し尊敬している。


「つーか、『建物ぶっ飛ばしていい』って言ったのAだろ!」
「は、何、ぬ、濡れ衣なんだけど。私は『屋敷を壊せば早い』とは言ったけど、壊していいとか言ってない、し。……多分」


ぶん殴られた五条が、私を道連れにしようとしている!何て恐ろしい悪魔なんだろう!


「……A。それは本当なのか」
「最終的に壊したの五条ですし。私責任とらないって言いました」


私は悪くない、……はずだ。
先生は私をじっとりと睨みつけ、疲れたのか目を閉じて眉間を揉んだ。なるほど、許されたらしい。隣で差別だ何だと喚く男がいるが、そんなものは知らない。私は許されたのだ、君と違って。


「私、君と違って品行方正だから。日頃の行いが物を言うんだよ」
「品行方正な奴が呪術界に居てたまるか……」


先生はどうやら、本当に疲れ切っているらしい。可哀想に、五条とか傑のせいなのだろうな。後で労ってあげよう。五条とは反対側の隣から、「Aもだろ」とか言う硝子の声。だとすると、未成年喫煙をしている彼女もだ。それを思うと、この学年は終わっている。


「……とにかく。帳は絶対に降ろせ。非術師の為に。……分かったな」


一度大きく大きくため息をついて、先生はそう説教を締めくくった。……非術師の為に、彼等の平穏を守る為。私は、非術師よりも……愛しい、あの人を。そこまで考えて頭を振った。この思考は良くない、危険だ。

私がそうしてかき消したそれを、五条は簡単に述べてみせてしまうのだ。


「そもそも、帳って必要か?」

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作者名:べにしょうが | 作成日時:2022年5月7日 19時

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