4話 ページ4
そうして1年が経過し、私達4人は2年生になった。傑と五条は軽々と1級に上り詰めて、私は必死にその背中を追いかけている。置いて行かれないように、傑の眼中に入っていられるように。……準1級が今の限界だったけれど。
2年に上がる頃には、傑と五条のコンビは正しく『最強』と呼ぶに相応しくなっていた。特級だって、夢じゃない程に。
1級呪霊だろうが呪詛師だろうが難なく倒して、今日も教室で馬鹿をやっている。……今は、五条の待ち受け画面がどうのこうの、とかなんとか。
「君の待ち受けって何?私は傑の隠し撮り」
「まだ拗らせてたのか。てっきりもうデキてんのかと」
「それは言わない約束のはず」
そう。私は1年経ったにも関わらず、まだ傑への思いを拗らせまくっている。私はもう彼を看取るつもりまであるのだけど、それを面と向かって言う勇気はない訳で。変に時間が経ったせいで、余計に言いづらくなってしまっている。そんな思いも込めてため息をつくと、
「なんであんなクズが良いんだか」
……理由を語らせれば、1時間以上かかるけど良いかな。でも、聞いてきたのは彼女だし。
硝子を見つめてみると、露骨に面倒くさそうな顔をした。君って本当に勘がいい、なんて思いながら口を開けた瞬間、五条がぽつっと呟いた。
「そういや歌姫の奴と冥さん、帰って来ねぇな」
確かにそうだね、と傑が同意する。硝子と私は目を見合わせ、どちらともなく頷いた。歌姫先輩と冥冥先輩が任務に行って、確かもう2日くらい経つはず。1級の冥冥先輩がいるから、何かあった、って訳ではなさそうだけど。
任務も無いし見に行ってみるか、とは誰が言ったのか。反対意見も賛成意見も特になく、私達は様子を見に行くことにした。補助監督の人に送ってもらって、自分で帳を降ろすからと五条が突っ走って。……これが後にちょっとした波乱を呼ぶとは、全く思ってなかったけど。
「すごい大きい屋敷だね、傑」
「……ああ、確かに」
「その真剣な横顔も素敵だね。好きだよ」
語尾に愛の告白を添えてみた。傑は先輩達がいるであろう屋敷を見たまま、何も返事をしてくれない。耳が赤くなるくらいしてくれても良いんじゃないだろうか。本当に塩対応だ。……そこも悪くない、むしろ好きだと思ってしまうあたり、私はひどく重症だろう。
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べにしょうが | 作成日時:2022年5月7日 19時