2話 ページ2
とまあ、傑に一目惚れしてから3ヶ月。既に恋と呼んできいのか分からないくらいに肥大した感情を抱えて始めている。いわゆる執着と呼ばれるそれである。愛しいとかそんなものじゃなく、私のものにしたい、私を見てほしい。そんなことで頭がいっぱいだ。結構重症かもしれない。
「……A、さっきからニヤニヤしてどうかしたのかい?」
「別に気にしないで。君のことを考えてただけだから」
傑が私を見ている。それだけで、舞い上がりそうになる程嬉しい。何より彼が私の名を呼び捨てで呼んだのだ。初対面では、それはそれは綺麗な愛想笑いで、私の要求をはねのけたのに!
鼻歌を歌い出しそうな雰囲気を感じ取ったのか、愛しい人は眉を寄せる。うんうん、そんな表情も素敵だよ。
「ちょっと待って。状況分かってる?」
「君と私の合同任務。今は呪霊捜索中。2人きりだね、デートかもしれない」
私のうっとりとした表情に何を思ったのか、傑は私の肩に手を置いて厳かに尋ねる。心臓を射抜く細目を見つめないようにしながら、そっと返答した。上ずりそうになる声を誤魔化すように、くだらない冗談も添えてみる。流石に呆れたのか、傑は口を開こうとして__手を前に伸ばした。
「どうやら、あっちから来てくれたようだね」
傑の視線の先を追う。そこにはニタニタと汚く笑う低級呪霊。咄嗟に呪具を掴んで構えた。
彼は薄く笑って、何かを掴むような動作をする。次に手を開いた時には、傑の手の平には真っ黒い玉が乗っていた。制服のポケットにそれを突っ込むと、「帰ろうか」と言いたげに帳に向かって指さした。
「傑、さっきの玉は何?」
「呪霊玉だね。私の術式で使うんだ」
帳に向かいながら話していると、首筋にチリッとした感覚を覚えた。呪具を掴んで後ろを振り向く。
「……!」
槍の呪具を突き出し、残っていたらしい呪霊を屠った。この感じからすると、多分3級。……多分、流石にもういないはずだ。傑を見ると、彼は驚いたように私を見ていた。
「A、闘えたんだね」
「そりゃあ、私は一応呪術師の家系だから。……まあ、五条とかに比べたら、力も全然ない家系だけど」
私だって強いんだよ、と少し胸を張って見る。傑は堪えきれなかったように笑った。いつも飄々としているけれど、やっぱりその年相応の顔が1番好きだよ、傑。
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作者名:べにしょうが | 作成日時:2022年5月7日 19時