時計仕掛けの中で【Fischer's】 (ページ9)

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世界寿命まであと22日【Silk】ページ9

＊

「『あっっっちぃっっ！」』

炎天下、だらしなく着崩した制服で
アイスを片手に歩く帰り道。

五月蝿く響く蝉の声が鬱陶しい。

私は照りつける太陽を睨んで
溶けかけのアイスにかじりついた。

冷たいソーダが口の中を冷やして
一瞬で溶けていく。

『この暑さは異常だよ。』

呻くように私が言えば
アイスを食べていたシルクが私を見る。

「ふぉんふぉいあ。」

『何？』

モゴモゴと喋るシルクに怪訝に聞き返せば
眉をしかめてアイスを飲み込む。

「ほんとにな。」

『あぁ。』

手前の下り坂を見ればゆらゆらと揺れる陽炎。

思わずはあ、と深くため息をついた。

シルクが死にそうな顔でシャツを扇ぐ。

その様子を見ているとシルクが視線に気付き
シャツを扇ぐ手を止める。

「何見てんだよ。」

シルクが私の頭を乱暴に撫でる。

『うわっ！？』

驚いて両手で彼の手を掴めば
目を真ん丸に見開くシルク。

「お前手ぇ冷たっ。」

そうかな？と思ったが確かにシルクの手は
私の手よりも断然熱かった。

『元々低体温だから、ね……。』

言い終わるよりも前にシルクが
私の手を自分の頬へと当てた。

「冷たー。」

微かに微笑むシルクを見て
どんどん私の体温が上がっていくのがわかる。

すると正気に戻ったのか
シルクがハッとした顔で私の顔を見つめた。

私が目線をそらせば慌てて手を離すシルク。

「わりぃ。」

その頬は微かに赤らんでいた。

『いや、別に…。』

きっと私の顔も真っ赤なのだろう。

私たちは俯きがちに歩いた。

顔が熱い。

鳴り響く胸の鼓動が五月蝿い。

「………暑いな。」

『ね。』

微妙な距離感のまま私たちは坂道を歩いた。

果てしなく広がる青を見上げる。

幸せ。

その二文字が私の胸を焦がす。

期限があるからこそ
こんなにも満たされるのかもしれない。

＊