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「アーヤ...
今まで、ありがとうっ...」
「...安らかに眠れよ、立花...」
「...大好きだよ、アーヤ...」
思い思いに彩に短く挨拶をしながら、枕元に花を飾る。
淡いピンク色や、黄色、白や紫など様々な色の花で囲まれた彩が、起きていたら喜ぶんだろうななど考えてしまって涙をぐっと堪えた。
火葬場で彩が中に入れられるのを静かに見守る。
...次、会う時、もう彼女は姿すら見えなくなってしまう。
それは分かっているのに、どうしても彼女を直視出来なかった。
どれだけ弱いんだ と自嘲じみた笑みを零しながら、目を伏せた。
_________彼女の姿は見えなくなった。
「...わざわざ今日はありがとう。」
「いえ、そんな...」
「きっと、彩も喜んでいるよ」
そう、たった一日のことなのに、酷く疲れ切り、やつれたような顔をした彩の父が全員に話しかけてくる。
それに首を振りながら、若武がぎこちなく微笑んだ。
「...すみません、ちょっと外の空気、吸ってきます。」
「...あぁ。ごめんね、引き止めて。」
悲しげに小さく笑うと彩の父はボロボロと涙を零し、母に抱きついている彩の妹の元へ向かった。
それを虚ろな目で見ながら、若武が外に出て行こうと、背を向けた。
だが、その前に、スっと誰かが立ち塞がる。
それに顔を上げると、彩の兄、立花裕樹がじっと見据えていた。
その目は泣いたのか、微かに赤くなっている。
「...お前ら全員ちょっと来い。」
目を細めながらそう言うとさっさと歩き出す。
それに黙って全員でついて行った。
建物を出て、火葬場の方へ向かっていったかと思ったら、その奥にあった草だらけの細い道を歩いていく裕樹。
どこに行くんだ と思わず眉を顰めながらも考えることが面倒でそのまま後に続く。
そうして、ようやく辿り着いた場所。
それは辺りいっぱいにあった木々がなくなり、柵が付けられた見晴らしのいい所だった。
全く人気のないその場所はまるで秘密の場所のようでもある。
「さっき、見つけたんだ。結構いいだろ。
...で、本題。単刀直入に聞く。
お前ら、彩がいなくなってから泣いてないんだろ?」
その言葉にビクッと肩を揺らた。
全員がどこか気まずそうに視線を逸らす。
それを見て、ふっと小さく笑った。
そして、近くにいた若武の頭をくしゃりと撫でると、ゆっくりと口を開いた。
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小四 - 感動しちゃいました。 (2022年4月30日 8時) (レス) @page8 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - ゆうひ「俺お前のこと好きだよ」 忍「 ちゃんと砂原の声聞こえたんだよかった」 翼「 俺としては必ずキメるつもりなんだ」 砂原「 俺、声聞きたいって言ったろ。聞かせてよ。ひと言でいいから。」 ゆうひ忍翼の3人は恋する図書館砂原は コンビニ仮面に乗っています (2021年4月21日 21時) (レス) id: be27a6782a (このIDを非表示/違反報告)
morosu武(プロフ) - 「俺、才能なんてないよ。いろいろできるって思われてるみたいだけど、それって全部、努カの結果だから。」ハ一ト虫の翼の言葉です!がんぱってください! (2020年10月18日 21時) (レス) id: a42120e652 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - morosu武さん» 似てますか!?ありがとうございます!!いや、一応意識してアーヤちゃんに似せるように書いていたんですけど、書いているうちに あれ?なんかアーヤに似てない、かも…… と不安になっていたので、嬉しいです*何とか早く仕上げていきたいです。頑張ります! (2020年10月17日 20時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - リリーさん» やーっと小塚くんまできました〜!いや、ほんとに進みが遅い。愕然としております。翼と忍、早く登場させたいなぁ……(遠い目)もう段々寒くなってきましたので、リリーさんも体調等お気をつけ下さい。毎回コメントありがとうございます* (2020年10月17日 20時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セダム | 作成日時:2019年7月31日 23時