。* ページ46
·
「翼……今、なんて……」
「アーヤが好きだ」
信じられなくて目を瞬かせながらも尋ねた声は少し掠れていた。
真っ直ぐに告げられる言葉と瞳に目が逸らせない。
ストンと地面に踵が落ちる。ゆるりと肩から手を外そうとするとその上を指先が少し冷えた大きな手が覆う。
「ずっと前から好きなんだ。俺と付き合ってください」
真剣な色を灯したその瞳がどうしても嘘だとは思えなくて。
でも、翼は……
「な、何で？ だって、私たち……」
「うん。心の友だったよね。恋愛よりも友情がいいって。でもごめん。止められなかった」
"止められなかった"
その言葉に瞳が揺れる。
それは身に覚えのあるものだったから。
「アーヤ。俺ね、初めて恋を知ったんだ」
ぽつりと翼が呟く。
長い睫毛を伏せ、重ねていた手を退けるとその手は自分の胸に向かった。
「何度も抑えようとした。君がそれを望んでいないことは俺が一番よく知っていたし、俺も恋愛を望んでいなかったから。でも、無理だった」
グッと力を込め、胸元をクシャりと歪めた。
淡々と話していた声が低くなり、少し苦しげに、でもはっきりと言葉が紡がれる。
「抑えようとすればするほど、その気持ちは大きくなる。胸が苦しくて、この感情をなんて言えばいいのか、なんて表現すればいいのか、分からなかった」
……私も。
私もよく分からなかった。
翼の言葉に心の中で呟いた。
苦しくて、辛くて。
思い描いていた恋とは全然違くて。
辿り着いた答えを認めるのに時間がかかった。
「でも、気付いたから。気付いてしまったから。もう、誤魔化すことは出来ない」
スっと視線を上げた翼の目に貫かれる。
熱くて火傷してしまいそうだ。
真剣な色を灯しながらもこちらを見据えるその瞳は今は激しい炎のように熱を帯びていて。
……あぁ、その通りだ。
もう、誤魔化せない。
認めるしかないじゃない、そんな目を見せれたら。
「アーヤと両思いになりたいんだ」
シンプルでストレート。
真っ直ぐすぎるその言葉に私は白旗を揚げた。
「……それなら、もうとっくになってるよ」
私の負けだ。完敗だ。
あの時、マリンにこの想いを気付かされたときからもう負けは決まってたんだろう。
リンリンとどこかで軽やかな鈴の音が風に乗って聴こえてきた。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セダム(プロフ) - むっちゃんさん» わー、ありがとうございます！！更新遅くてごめんなさい！続きも楽しんで読んでもらえればと思います！ (2021年12月24日 21時) (
レス) @page44 id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
むっちゃん - 続きが気になって気になってたまらなく、気づいたら読み終わってました。最高です！！ (2021年11月25日 22時) (レス) @page39 id: fa31dfe0b6 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 萸衣さん» あちらの方も読んでくださりありがとうございます！！どちらも更新不定期ですが更新した時は読んでくれると嬉しいです。頑張ります！ (2021年7月31日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
萸衣 - pixivでもセダムさんの作品読ませていただいています。とても面白いのせこれからも更新がんばってください。 (2021年3月29日 20時) (レス) id: 1e603ecb86 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 千香さん» 大丈夫ですよ(^^)消しときますね！ (2019年8月26日 22時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セダム | 作成日時：2019年4月20日 19時
