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そこは図書館かと思うほど、天井まである本棚に隙間なく本が立ち並び、圧巻だった。
そこにゆっくりと近づくとコーヒーの匂いに混じって、ふわりと本特有のインクと紙の匂いがする。
「アーヤ。まずは座ろう」
うっとりとしていると翼の笑いを抑えた声がした。
ハッと我に返ると、店員さんがどこか生暖かい眼差しでこちらを見ていて、顔に熱が籠る。
慌てて翼の横に並び直し、そそくさと席に着いた。
うぅ、恥ずかしい……
「アーヤ、本好きだしこういうの好きかなとは思っていたけど、ここまで喜んでくれるなんて」
「うん。前に悠飛からブックカフェっていう本が読めるカフェがあるって聞いて行ってみたかったからすごく嬉しい。素敵なお店だね、ここ」
街道から離れているせいか、とてもお店の周辺は静かで、店内はとても落ち着いた空間になっているの。
木造建築っていうところも柔らかな空気を演出しているみたい。
どこかレトロモダンな雰囲気が漂っていて、とても居心地がいいんだ。
「アーヤ、何頼む? お腹は空いてる?」
「えっと……」
ちょっぴり浮かれた気分でメニューを覗き込んだ。
そこには美味しそうなメニューがズラリ。
中でも目に飛び込んできたシフォンケーキに唾をゴクリと飲み込む。
見ただけで分かる、その生地のふわふわ感。
ふりかけられたお砂糖はまるで雪のよう。
更にクリスマス仕様になっているのか雪の結晶をホワイトチョコでコーティングしたものと文字が入ったものが上に乗っているの。
私はもうそれに一目惚れ!
可愛いし、美味しそう……!!
食べたいな、と目を横にずらす。
けれどその瞬間、がっくりと項垂れた。
うっ、ちょっと無理かも。
思わず鞄の中にあるだろう財布を思い返しため息が零れる。
そこまで高いわけではないけれど、私のお小遣いはそこまで多くない挙句、月末の今、残金はあんまりない。
ケーキを頼めば、飲み物が飲めないだろう。
それは何だかなあ。
でも、仕方がない。
だってお金がないんだもの。どうしようもないよね。
断腸の思いでケーキから目を離し、じっとこちらを見ていた翼に微笑む。
「お腹空いてないから飲み物だけでいいや。カフェオレにするね」
「……そっか」
軽く頷いて翼が店員さんを呼ぶ。
うう、さよなら私のシフォンケーキ……
「ご注文はお決まりですか?」
「はい。じゃあ、コーヒーとカフェオレ、ガトーショコラ。それから……シフォンケーキください」
……え?
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セダム(プロフ) - むっちゃんさん» わー、ありがとうございます!!更新遅くてごめんなさい!続きも楽しんで読んでもらえればと思います! (2021年12月24日 21時) (レス) @page44 id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
むっちゃん - 続きが気になって気になってたまらなく、気づいたら読み終わってました。最高です!! (2021年11月25日 22時) (レス) @page39 id: fa31dfe0b6 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 萸衣さん» あちらの方も読んでくださりありがとうございます!!どちらも更新不定期ですが更新した時は読んでくれると嬉しいです。頑張ります! (2021年7月31日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
萸衣 - pixivでもセダムさんの作品読ませていただいています。とても面白いのせこれからも更新がんばってください。 (2021年3月29日 20時) (レス) id: 1e603ecb86 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 千香さん» 大丈夫ですよ(^^)消しときますね! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セダム | 作成日時:2019年4月20日 19時