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私が一体何の決着を付けようとしているのかを知ったのは、目の前で繰り広げられるバスケの試合が始まって大分経ってからだった。
……先程から度々飛び交う2人の話を繋ぎ合わせると、どうやら私はこの試合に勝った方と今日出掛けることになるらしい。
えっと……何で?
何故私と出掛けることを掛けた勝負をしているのか、何故そんな試合が行われることになったのか……色々聞きたい。
先程、大和くんに確認されたのは今日勝った方と出掛けることになってもいいかの確認だったらしい。
何であの時嘘をついて頷いてしまったの……
後悔先に絶たず、とはこのことだなと頭を抱えながらそう思った。
ちなみに後悔、というのは後なって悔いるから。そして、それは後になって悔いてもどうしようもないから、そう言われるようになったんだって。
この言葉を考えた人はなんて素晴らしいのだろう。
今の私の状況にぴったりだ。
そんな現実逃避をしながら激しく抗戦を続ける2人に目を向ける。
体を動かして暑くなったのか、試合の途中で放り出されたマフラーとコート。
見てるだけで寒くなる薄着の2人の試合を眺めながら、それを拾い上げ丁寧に畳んでいく。
……校門で出待ちしてまで朝練を観戦していた女の子の気持ちが今なら分かる気がするな。
温もりの残るそれらを膝に乗せ、私はどんどん激しさの増す試合に次第に目を奪われていった。
正直、私はバスケをよく知らない。
体育の授業で教わった基礎中の基礎のことしか分からない。
だから、ドリブル凄いなぁ、とかボール回し凄く早いや、とかそんな月並みな感想しか出てこない。
それでも、2人の試合は見ていてハッとさせられたの。
息を切らしながら、鋭い視線を向けて相手をガードしたり、ボールを奪いに行くその姿に。
互いが全力で向かっていくその後ろ姿に。
目を奪われたの。
2人の周りだけがきらきらと輝いているようだったの。
そんな2人の姿を、あの女の子たちは見に行っていたんだ。
そりゃ、見たくもなるかも。
今まで見に行ったことのなかったそれにちょっぴり惜しい気持ちをしながら、いつの間にか私はすっかり魅入っていた。
そして……長くも短くも感じたその試合も、終わりがくる。
「はっ……やった……」
「……くっそ、負けたーっ!!」
喜びを噛み締めるように拳を上げる彼と悔しそうに叫びながらもどこか憂さが晴れたような表情の彼。
「アーヤ!」
勝者が笑って私を呼んだ。
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セダム(プロフ) - むっちゃんさん» わー、ありがとうございます!!更新遅くてごめんなさい!続きも楽しんで読んでもらえればと思います! (2021年12月24日 21時) (レス) @page44 id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
むっちゃん - 続きが気になって気になってたまらなく、気づいたら読み終わってました。最高です!! (2021年11月25日 22時) (レス) @page39 id: fa31dfe0b6 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 萸衣さん» あちらの方も読んでくださりありがとうございます!!どちらも更新不定期ですが更新した時は読んでくれると嬉しいです。頑張ります! (2021年7月31日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
萸衣 - pixivでもセダムさんの作品読ませていただいています。とても面白いのせこれからも更新がんばってください。 (2021年3月29日 20時) (レス) id: 1e603ecb86 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 千香さん» 大丈夫ですよ(^^)消しときますね! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セダム | 作成日時:2019年4月20日 19時