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「……ひっどいなぁ、立花。そんなこと、言われたら、何で って言いたくなんじゃん。そんな良い奴なら俺でいいじゃん、って」



そう言った大和くんの言葉は揺れていた。

先程まで浮かべていた柔らかな笑みは消え、何かを堪えるような表情をする。


その表情に優しい彼が私のために心に秘めようとしていたであろう自分の気持ちを吐露しようとしてくれるのが分かって私はキュッと手を握りしめた。




「俺さ、本当にお前が好き。お前のこと、好きになってからさ、自分がどれだけ小さくて嫌な奴なのか知った」




静かに紡がれる大和くんの低くて心地よい声。
さわさわと風に揺れて木々から葉が落ちる。

夏が終わってほんの少し涼しくなったその風が自然の匂いを運んできた。


躊躇うように言葉を止めた大和くんを見つめ、続きを待つ。

2人きりのこの場所はとても静かで自然の紡ぎ出す音だけが辺りに響き渡った。




「……お前が翼や七鬼とかと仲良さげに話してると、思うんだ。そんなに他の男と話さないで欲しい、その笑顔を向けないで欲しいとか思った」



彼氏でもないのにさ。



吐き捨てるようにそう言うと顔を俯かせた。
その言い方にチクリと胸が痛くなる。




「自分の中に渦巻くそんな黒い感情に吐き気がした。立花のこと好きになるたび、その感情は大きくなっていくし。それを抑える術なんて知らなくてどうすればいいのか分かんなくて。……もうだったら言っちまえって」





それで……とまだ苦しげに言葉を紡ごうとする大和くんに思わず口を開いた。





「……それは、きっと普通のことなんじゃないかな」



「……え?」



「恋をするのってそんなに綺麗なものじゃないと思う」





今まで、恋っていうのはよく恋愛小説とかであるあんな甘酸っぱくてキラキラしたものだと思ってた。


でも、実際は全然そんなものじゃなくて。




誰かを好きになるとその相手しか目に映らなくなる。
誰かを好きだという想いは抑えられるものではない。



彼に名前を呼ばれたいと思う。
彼が自分から離れていってしまうと思ったら胸が痛くて、張り裂けそうで、怖くなる。




……甘酸っぱい、とか、キラキラしてる、なんてものからは程遠い、まるでコーヒーのように苦くて不透明なもの。


コントロール不能で自由が利かない……そういうもの。




それが " 恋 " なんだって、私は初めて知った。




だから、きっと大和くんが抱いたその気持ちは普通だと思うんだ。




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セダム(プロフ) - むっちゃんさん» わー、ありがとうございます!!更新遅くてごめんなさい!続きも楽しんで読んでもらえればと思います! (2021年12月24日 21時) (レス) @page44 id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
むっちゃん - 続きが気になって気になってたまらなく、気づいたら読み終わってました。最高です!! (2021年11月25日 22時) (レス) @page39 id: fa31dfe0b6 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 萸衣さん» あちらの方も読んでくださりありがとうございます!!どちらも更新不定期ですが更新した時は読んでくれると嬉しいです。頑張ります! (2021年7月31日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
萸衣 - pixivでもセダムさんの作品読ませていただいています。とても面白いのせこれからも更新がんばってください。 (2021年3月29日 20時) (レス) id: 1e603ecb86 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 千香さん» 大丈夫ですよ(^^)消しときますね! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セダム | 作成日時:2019年4月20日 19時

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