【d！】悪魔に取り憑かれた系幼女lll (ページ30)

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外資系と昔話ページ30

そう言えばショッピ兄様に呼ばれた理由をまだ聞いていない。いつもは前日によばれるのだけど今日は珍しく朝ご飯の時に呼ばれた。それで理由を聞くことが出来なかったのだ。

『ショッピ兄様？今日はなんで呼ばれたのでしょうか…』

syp「あぁそうだ。…昔話を聞かせて欲しいんです」

『昔話…？また何故』

syp「実は最近中々眠れなくて。Aさんの昔話を聞くとよく眠れるんですよ」

『ふむ。では…私が作ったオリジナルのお話でもしましょうか。』

顔を明るくしてありがとうございます、と言うショッピ兄様にふわりと微笑む。今日は夜の見回りがあるらしく今から仮眠をするんだそう。だから今から寝るんだ。ベッドの中にもぞもぞと入ったショッピ兄様は私の方を見てワクワクしている。私は少し笑って近くにあった椅子をベッドの近くまで持っていきそこに座った。

『では始めますね。───とある女の子のお話を』

その少女は至って普通の家に生まれた。優しい親と優しい兄。3人に深い深い愛情を貰いながら育ってきた少女。そんなある日、少女の目の前にある男が現れた。

「お嬢さん、君は今どんな気持ちだ？」

その男は薄い金色の髪をゆらりと揺らして少女の元へと近づいた。少女はその男の言葉を聞いて首を傾げたがやがて小さく呟いた。

「…こわい」

少女は愛されたからこそ怖かった。
自分が何も出来なくなるのが
自分が無知になるのが
自分が何も考えられなくなるのが
自分が────消えてしまうのが。

「じぶんが消えちゃいそう。だから、こわい」

「そうか。ならお嬢さん。──────私の所へこないかい？」

私なら君に色々な事をさせてあげよう
私なら君に何でも教えてあげよう
私なら君に幾らでも考えさせてあげよう
私なら──────君を求めよう。

「…わたし、を求め、る。」

その言葉は少女にとっては優しく甘い言葉だった。だが周りからしたらそれはまるで…此方へと促すような悪魔の言葉。然し少女はそれを知らずに男の手を取ってしまった。

「ようこそ。…暗闇の箱庭に。」

少女はその瞬間、捕らわれた。…その後どうなったかは誰も知らない。

『…眠ってるね。』

話し終えてショッピ兄様を見ればこちらを向いたまますやすやと寝ていた。ゆっくりと立ち上がって椅子を片付けてショッピ兄様の部屋の電気を消し静かに扉を閉めた。

『…暗闇の、箱庭か。』

いつの間にか自分が話していたお話。その少女と自分が重なっているように思えて。私は独り呟いた。