第１０１話 ページ6
当時Aの立ち上げた黒蝶会は、まだ探偵とも攘夷軍の残党ともつかない集団だった。
出来事は数年前。
偶然Aたちの滞在する地を将軍家の跡取りが見に来るということで、その噂を聞きつけたAは迷うことなく茂茂暗殺の計画を立てた。
どんな形であれ政府に一矢報いたい、ましてや多数の犠牲の上に立つ幕府の未来を断てるならやってやりたいという、怨念を強く持って。
計画通り茂茂を捕らえたAは彼の喉元に刃を突きつけ、言った。
中沢「我が仲間の恨みを受け止めろ」
と。
敬われることもあれば恨みを強く買うこともある茂茂だが、必死なあまり目の前すら捉えていない彼女の様子が、茂茂には気がかりだった。
茂茂「恨みとは？」
真摯にAの心を理解しようとした茂茂はAに説明を求め、語る彼女の顔を忘れまいと強く受け止めた。
しかしやはり納得ができなかった。
茂茂「其方の仲間の恨みは余を討ち取って晴らせるものか」
中沢「あぁそうだよ！てめぇらが国を売らなきゃ奴らは…！」
茂茂「余を討とうがこの世は変わらぬ。余が死んでも、他の跡取りが同じ思想を持ちこの世を牛耳るだけだ。そうだろう」
そう死を眼前にしても冷静沈着な茂茂。殺そうとしている相手諭す器。Aの手は止まってしまった。
茂茂「其方の信念がそうさせるのであれば仕方あるまい。しかし、仲間を思い慕う其方の信念は、余を討つことなど関係なかろう」
悲しみに明け暮れていたAが忘れかけていた信念。茂茂はそれを思い出させてくれたのだ。
中沢「………」
茂茂「其方が道を踏み外すことはない。其方の言葉、しかと受け止めた。この茂茂が、其方が愛した仲間に恥じぬ世を作ってみせよう」
そこまで言わしめた茂茂を斬ろうなどということはできず、Aは黙ってその場を立ち去った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RIO - 小説読ませてもらっています！更新待ってます！！ (2022年4月15日 0時) (
レス) @page11 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
無関 - まじで面白かったです！頑張って下さい！！ (2021年11月18日 21時) (レス) @page8 id: dbba37e842 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗月 | 作成日時：2021年11月11日 17時
