悲しき想い出 −past− ページ4
ずっと好きだった。
本当に、ずっと……。
和「A………？」
全身に染み渡っていくように伝わる和の体温。
小さい頃からこの体温に、何度も救われてきた。
『かず………』
抱きしめられた腕の中で、和の鼓動を聴く。
トクン、トクンと早鐘を打っているのが伝わってきた。
和「コッチ向いてよ……(笑)」
2人きりの和の部屋。
こんな状況は初めてじゃないのに、いつもと違う雰囲気が漂ってることくらい、子どもじゃないんだからわかってる。
恥ずかしくて顔を上げることが出来ないあたしの両頬を包むようにして、あたしの視線を強制的に向けさせた。
和「Aちゃん？ 顔真っ赤……(笑)」
からかうような言葉を言う和は意地悪だ。
何でこんなことになってるかわかってるくせに。
笑ってるかと思えば、一瞬で真剣な表情になる。
近づいてきた口唇に、答えることに必死だった。
和「なぁ……。イイ……？ オレ、Aとシタい………」
食べられるようなキスで、呼吸が乱れる。
焦点の合わない目線。
『あたしもっ………、和がイイ……』
和「イタかったら言えよ……？」
その後は、2人ともただただ夢中だった。
子どもだったあたし達は、お互いの距離を縮める方法が見つからなくて。
オトナの真似しか出来ない。
それでも一生懸命だったことに変わりはないし、後悔だってない。
ただ、この先ずっと、和の隣にいたい。
それだけだった。
『かずっ………、離れて……かないでっ………』
和から与えられる一定のリズムの中、必死に伝えた気持ち。
和「ずっと………傍に……居るからっ………」
この言葉を、ずっと信じようと思った。
信じていたかった、中3の冬。
これがあたしと和の、最後の想い出。
でも、“ずっと”なんて言葉は存在しないんだよ。
永遠なんて、そんなの空想でしかない。
中学を卒業したあたし達は、同じ地元の高校に進学した。
毎朝一緒に登校する。
中学と変わらず過ごしていけると思ってたのに。
入学して早々に和の人気は増し、一緒に登校どころか過ごすことも会話をすることも出来なくなった。
仕事も沢山貰えて、欠席も目立つ日々。
あたしから離れてかないって言ったのに。
ずっと傍に居てくれるって言ったのに。
心の中で、毎日和を責めた。
そして和は、夏休みが明けた9月に、知らぬ間に転校。
和のデビューを知ったのは、朝の情報番組だった。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年10月31日 2時
