運命の巡り合わせ ページ3
『異動…………ですか…………』
決算月を終えようとしている1週間前。
まだ桜も二部咲きまでいってない3月の終わりに、人生初の異動の辞令が出た。
この会社に勤めて10年。
長きに渡って所属した商品開発部からの人事異動。
「出世じゃないか！ もっと喜べ(笑)」
ガハガハ笑う上司に愛想笑いを浮かべながら、手渡された辞令に視線を落とす。
4月1日付で、商品開発部から広報部へ。
あたしにとっては、完全なる未知の世界。
無論、会社の命令に背けることは出来ず、大きな溜息を吐いた。
それからの1週間は、目まぐるしく過ぎ去る。
業務の引継や、デスク移動の準備。
総務に行って、セキュリティカードの変更手続きもあった。
商品開発部での仕事の最終日。
先輩・後輩も含めて送別会的なものも開いてくれた。
「Aさんいなくなったら寂しいです……」
一番手を掛けた後輩からの一言で、少し涙が滲んだのは内緒。
この10年間、人に恵まれて幸せだったと痛感する。
『本日付より商品開発から異動になります、仁科です』
部長の仕切りで紹介され、簡単に挨拶を終えると広報フロアの案内をしてもらった。
デスクが隣になった、1年先輩の二葉さん。
二「広報は商品開発と違って外回りも多いからね。少し大変だけど、何か困ったことがあったら何でも言ってね」
二葉さんは別チームの責任者だから一緒に仕事をすることはあまりない。
でもこの広報での経験がないあたしにとっては強い味方になりそうだ。
ランチは二葉さんと一緒に出た。
隣ビルのオープンテラスのカフェ。
商品開発の時は研究室に籠ることもあったので、こんなに優雅にランチを取るのは久々だ。
二「Aちゃんって、最初の仕事が何か知ってる？」
『いえ……、まだ知らないです』
“そっか”と言いながらニヤニヤする二葉さん。
異動後初の仕事の内容が決まってるなんて、それすら知らなかった。
『部長からは何も聞いてないんですけど……。もう決まってるんですか？』
二「結構前から決まってたんじゃない？ “絶対Aちゃんが適任だ”って、部長が豪語してたし……(笑) でも、本当ラッキーだよね」
あたしが適任………？
ラッキー………？
この言葉の意味がわかったのは、その1時間後。
昼休み明けに部長から手渡された資料には、あたしが商品開発に携わったシャンプーの企画書。
そこにはイメージキャラクターとして、彼の名前が連ねてあった。
悲しき想い出 −past−→←Prologue −side N−
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 913人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：凛
| 作成日時：2013年10月31日 2時
