切れた関係 ページ18
リ「どちらさまですか……？」
すっぴんに和の物であろうメンズの部屋着で。
気怠そうにそう問い掛けてきた彼女。
女優兼モデルで、最近はテレビに引っ張りだこのリナだった。
頭の先から爪先まで、品定めするように見つめられる視線。
気が済んだのか、彼女は勝ち誇った表情をして鼻で笑った。
『仁科です。二宮さん、いらっしゃいますか？』
あたしには関係ない。
その強い意志を奮い立たせて、平然と答える。
リ「ちょっとお待ちくださいね？(笑)」
彼女はリビングに居るであろう和に、女性特有の甘ったるい声で呼び掛けた。
リビングから、Tシャツにスエット姿で現れた和。
下のオートロックは自分で出たくせに。
玄関先は彼女に出させるなんてどうかしてる。
確かにあたし達は15年前に終わった関係だけど。
あんな形で終わってしまったからだろうか。
胸が苦しくて、ここから早く逃げ出したかった。
「Aちゃん……、ごめんね……(笑)？」
そう笑かけてきた和。
その表情は、あたしが最後に見たものと一緒なのか、今はもうわからない。
あたしだって、和が居ない間も一生懸命生きてきたんだ。
もう、あの頃の泣き虫なあたしじゃない。
和ママから預かった紙袋を、笑顔で目の前に差し出した。
『確かに、お渡ししたんで。失礼します』
リビングへ繋がる扉の前で、あたし達のやり取りを睨むようにジッと見ている彼女。
勘違いされたくもないし、こんな芸能人2人を目の前に、あたしみたいな一般人は不釣り合い。
「そんな……(笑) 直ぐ帰ろうとしなくったっていいじゃん(笑)」
和が何でそんなことを言ってくるのか。
一体和は、何がしたいのか。
きっとあたしは、和にからかわれてるだけなんだ。
昔も意地悪なことをよく言われたけど、今はもう違う。
大切にされていたあの頃とは違うんだから。
そう思うと、真っ暗で何も見えなくなってしまった15年前にタイムスリップしてしまったみたい。
でももうあんな、悲しくて苦しい思いはしたくない。
『失礼します』
一言だけ言って頭を下げ、和の部屋を後にした。
下を向かず、ただ前だけを見て。
薄暗いエントランスを抜けて、良く晴れた青空の下に出る。
今のあたしにあるものは、遠い昔の過去ではなくてこの先の未来だけ。
和と過ごした15年間は、もう必要ない。
絶対に後ろには振り向かない。
そう思った。
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作者名：凛
| 作成日時：2013年10月31日 2時
