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その手に、触れた日 ページ2

少年がおもむろに立ち上がった。

そして、「ほら」と言って、私の手をつかんだ。

意味が分からずに、ぼーっと立ち尽くしてしまった。

そんな私を見て、少年は不思議そうに首を傾げた。

「何してんだよ。 行くぞ。」

そう、私に向かって言った。

手を、離さなきゃ。 そう思った。

しかし、一向に歩き出さない私を彼はまっすぐ見つめた。

そして、もう一度はっきりと言った。

「ほら、行くぞ。」

無理だ。 こんなにまっすぐ見つめられて。

こんなに優しく手を握られたら。

この子の手を離すなんて、絶対にできない。

こくりと、ゆっくり頷いた。

次の瞬間、

ふわり


少年が笑った。

時が止まったような気がした。

綺麗だった。 私が今まで見てきた、何よりも綺麗だった。

私が大好きな夕日もお星さまも、敵わないくらい。

そして、暖かかった。

こんな私の手を握ってくれることなんて、今まで誰が想像しただろうか。

何て暖かいんだろう。 何て優しいんだろう。

そう思ったら、涙が出てきた。

私の嗚咽に気づいたのか、少年は驚いて振り返ったが、

その後は立ち止まって何も言わず、ただ優しいまなざしを私に向けた。

そして手を握っていないほうの手で、私の涙をそっと拭った。



彼に連れられて、私はとある家の前に来た。

少年は「ただいま」と言い、家の中へ私を入れる。

私は、恐る恐る口を開いた。

「入って、いいの?」

少年は「ああ」とためらいもなく頷いた。

「今は親父がいないからな。」

そう言って私を居間までつれて行き、座らせる。

親父? ここのお父様は怖いのかな。

そう思ったが、どう聞いていいのか分からず、黙ったまま座った。

お父様に限らず、家族は出かけているらしく、家には誰もいなかった。

与えられたぬくもりと恐怖→←遠い夏の小さな記憶



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知佳(プロフ) - Sunoo@Melt,recordさん» 来てくださり、ありがとうございます!! そんな勿体ないお言葉を…!! いえいえ!こんなに早く来てくださり、感謝の限りです!! こちらこそ素敵なコメント、ありがとうございました!! (2020年6月25日 18時) (レス) id: b21ffae74c (このIDを非表示/違反報告)
Sunoo@Melt,record(プロフ) - うわぁぁぁぁ感動しました!めっちゃ泣きました。良い作品ありがとうございます!来るのが遅れてしまい申し訳ございません…。もっとはやくみてたほうがよかった。神 (2020年6月25日 16時) (レス) id: a2a8195863 (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - ゼラニウムさん» いえいえ! そんな風に言って頂けるのは大変光栄です! わざわざありがとうございました! (2020年5月28日 12時) (レス) id: b21ffae74c (このIDを非表示/違反報告)
ゼラニウム - 知佳さん» 返信、有り難う御座いました。分かりました。無理難題を押し付けてしまって、ごめんなさい。 (2020年5月28日 10時) (レス) id: 570015223c (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - ゼラニウムさん» 夢にも思わなかったので、とっても嬉しかったです!! 読んで頂き、ありがとうございました!! もし、またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします! (2020年5月27日 16時) (レス) id: b21ffae74c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:知佳 | 作者ホームページ:http://utanai.nosv.org/u.php/hptyomatu/  
作成日時:2020年4月15日 22時

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