君は願う筈 ページ16
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『けど先輩、シティじゃないですか』
「え？」
『…申し上げにくいんですけど私、ユナイテッド派です』
「…なぁ、やっぱりそうだったよな？」
『え、どういう反応ですか？それ』
「あー、いや。こっちの話」
『…？』
「…まぁあれじゃん、プレミアの選手じゃん」
『…それはそうですね』
「だよな、ははは」
それまで普通に話していたのに、今は何故か少し焦っているようで変な空気が流れる。
先輩の乾いた笑いが静かに響いた。
「…とりあえず分かった、スケジュール確認してまた連絡するわ」
『すみません、よろしくお願いします。それとお願いがあって』
「ん、どうした？」
『凪先輩にもこのことお伝えいただけませんか？』
「え？」
『先輩たち、同じクラブですよね？』
「あー、まぁ」
『なので、お願いしたくて』
「…もしかして、凪と話したくねぇ？」
核心を突かれてドキッとする。
もしかして先輩は、私と凪先輩の過去の関係を知っているのだろうか。
『…いえ、そんな訳じゃ』
「じゃあお前から連絡してやってくれる？」
『え』
「その方がアイツも喜ぶし、行く確率上がるから」
『…御影先輩には、お願い出来ませんか？』
「あぁ、悪いけど頼むわ」
どうやら私からの願いは受け入れてもらえないらしい。
『…分かりました。では、失礼します』
「おう、またな」
電話を切って、深いため息を吐いた。
それからすぐに凪先輩に電話する気にはなれず、時間が過ぎていく。
けれどイングランドとの時差もありタイムリミットが迫っていた。
手の震えに気付かないフリをして、深呼吸する。
もしかしたら番号も変わってるかもしれないし、出ない可能性だってある。
そうなれば今度こそ御影先輩に頼もう、と凪先輩が電話に出ないことを願いながら発信ボタンを押した。
「もしもし」
『…突然のお電話すみません。白宝高校サッカー部の、元マネージャーの…AAと申します』
「…うん」
知ってる、なんて懐かしい柔らかい声が鼓膜を撫でるから、思わず泣きそうになる。
「久しぶりだね、元気にしてた？」
あの頃と変わず優しくそう聞かれれば、胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなった。
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作者名：chiito | 作成日時：2023年4月14日 20時
