あなたは知る筈 ページ14
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大学に進学してからも翔や他のサッカー部のメンバーとは変わらず仲良くしていた。
月日が流れて、昔はソフトドリンクでしていた乾杯もアルコールで交わすようになった私たち。
『みんな本当にビールの美味しさ分かって飲んでるの?』
「ビールは味じゃねぇ、喉越しなんだよ」
『喉越しが美味しいって何?』
「いちいち突っ込むな、カッコつけさせろよ」
『えぇ、美味しいと思うもの飲んだ方が良くない?』
「男がカシオレなんて恥ずかしくて飲めるかよ!」
「その発言がもうダセェわ」
それでも会話のレベルなんてものは毎日顔を合わせていた頃とあまり変わらなくて。
くだらない話で笑い合える関係が相変わらず心地よかった。
「今日はOB会の打ち合わせ兼ねてんだから、お前ら酔うほど飲むなよ」
「OB会なぁ」
『集まるのは楽しみだけど、幹事はめんどくさいねぇ』
「な」
『てか私OGだし免除されたりしない?』
「されねぇよ」
『あはは、だよねぇ』
なんて笑いながら、手元の名簿に目を通す。
その中には突然おかしな時期に入部し、いつの間にか来なくなってしまった先輩二名の名前もきちんと記されていた。
白宝サッカー部では数年おきにOB会と称された同窓会のようなものが行われていた。
その幹事はランダムで引き継がれていて、面倒なことに今年はそれが私たちの代に回って来てしまったのだ。
「てか来んのかな、御影先輩たち」
『…どうだろうね』
「凪先輩も。あの二人が来たらすごくね?」
「…まぁ忙しいだろ、あの人らは」
「えぇ、けど俺会いたいわ。サイン欲しいし」
「すっかり有名人だもんなー」
その言葉に私は会いたくないけど、なんて心の中で溢す。
あれからもずっと気持ちをズルズルと引きずり続け、彼氏ができても毎回上手くいかず。
こんなに時間が経った今でさえ、会って普通に笑えるのか自信がなかった。
だから出来ることならあの人にはOB会に来て欲しくない。
そう心の中で愚痴を溢していれば話が嫌な方向に進み始める。
「A、あの二人と仲良かったよな?」
『え?そうでもないよ』
「けどこのメンバーの中で一番あの人たちと喋ってただろ」
『…そうかな?けど本当に仲良いとかじゃない』
「連絡先とか知らねぇの?」
『…分かんない』
そう答えた私の表情の変化を彼らは見逃してはくれなかった。
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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月14日 20時