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それから私は彼を意識するようになってしまい、惹かれるのに時間はそうかからなかった。
『御影先輩、ドリンクどうぞ〜』
「おう、ありがとなA」
『はい、凪先輩も』
「ん…A、起こして」
『もう、またですか？』
「おねがーい」
休憩に入り選手たちにドリンクを配るタイミング。
凪先輩はいつも寝転びながらこちらに手を差し出す。
いつの間にか、彼の上体を起こすのを手伝うのが私の仕事の一つに加わっていた。
『ん…っしょ。はい、飲んでください』
「んー、ありがと」
「おい凪、Aに毎回そんな重労働させんなよ」
「だって疲れ過ぎて一人じゃ起き上がれなーい」
『あはは、私なら大丈夫ですよ御影先輩』
「Aっていつも楽しそうだよな」
『そうですか？』
「マネージャーってそんな楽しいのか？」
『楽しいですよ、大好きなサッカーに携われるんで！』
「そんなにサッカー好きなんだ」
『逆に好きじゃなかったらマネージャーとかなってないです、大変なだけなんで』
なんて御影先輩と話しながら笑っていれば、凪先輩は隣でドリンクを飲みながら興味なさげに座っていた。
「Aは好きな選手とかチームってあんの？」
『ありますよ、筋金入りのマンシャインユナイテッドサポーターです！』
「マンシャイン…？」
『え、まさか凪先輩もユナイテッドサポーターですか？』
「いや全然、まず知らないし」
『そんなことあります？』
「俺、サッカーのこと全然詳しくない」
『けど有名じゃないですか？』
「まぁそうだな」
「俺は知らない」
『…そうなんですね』
「コラ凪、A落ち込んじゃったじゃん」
「…元気出してー？よしよし」
そう言って顔をグッと近づけて覗き込み、私の頭を撫でる。
『…御影先輩、凪先輩が私のこと子ども扱いします』
「えー、どうすんのが正解なの、コレ」
「けど珍しいぞ、めんどくさがりの凪がそんなことすんの」
『…もう知りませんー！』
そんなことを言われてしまえば、思わず勘違いしそうになる。
赤くなった顔がバレないよう、誤魔化すようにそう言ってその場を逃げた。
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作者名：chiito | 作成日時：2023年4月14日 20時
