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- S.N side -
花火が始まると、嬉しそうにはしゃぎ始めた彼女。
花火が打ち上げられる度にコロコロと変わる表情が綺麗で可愛くて、どれも見逃したくなくて。
花火を見る時間も、瞬きすることさえ勿体なく思えた。
『凪くん…?』
「俺さ」
『うん?』
「花火よりAさん見てる方が楽しいかも」
こんなに夢中になれるモノ、生まれて初めてかもしれない。
いつ気持ちを伝えようか、なんてグダグダ考える時間までもが惜しい。
「好きだよ」
『……え』
「俺、他の人にAさんのこと取られたくない」
『…うん』
「だから俺のになってよ」
『それって』
「俺と付き合って」
そう伝えれば、初めて見る彼女の表情。
愛おしいって、たぶんこういう気持ちなんだってぼんやりと思う。
振られたらどうしようとか、そんなこと考える暇もなかった。
『私も、凪くんのこと、好きなの』
「……マジ?」
『…マジ、です』
そんな彼女の言葉を聞けば、考えるよりも先に体が動いていた。
可愛い、綺麗、好き、誰にも見せたくない、俺だけの。
ごちゃ混ぜになった感情を彼女にぶつけるかのように、気付けば強い力で彼女を抱きしめていた。
『こちらこそよろしくね、凪くん』
「…あー、ダメ。いまこっち見ないで」
『え、どうして?』
俺の腕の中からこちらを覗き込む彼女は、今まで見て来たものの中で何よりも可愛い生き物で。
もっといろんな感情が湧き出てきて、キャパオーバーでしんどくなる。
それでもめんどくさいなんて感じることもないから不思議だ。
『ありがとう、凪くん』
そう言って彼女が小さな手で頭を撫でてくれれば、考えていることすべてが良い意味でどうでもよくなった。
『…なんか、夢みたい』
「夢だと困る」
『ふふ、本当だね』
抱きしめていた腕を解いて、彼女の細い指に自分のそれを絡めればきゅっと握り返される。
それだけで気持ちが満ち足りた。
しばらくしてアナウンスが放送されて花火の終わりが告げられる。
『花火すっごく綺麗だったね』
「…正直ほとんど見てないから分かんない」
『え、そうなの?つまらなかった?』
「ずっとAさん見てたら花火終わってた」
『…っ』
「だからつまんなくなかったよ。楽しかった」
『…凪くん、ストレートだね」
「Aさんは真っ赤だね」
『…知らない』
そう言って拗ねたような顔をする彼女も、やっぱり何よりも可愛かった。
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chiito(プロフ) - Saeさん» Saeさん、はじめまして!そんな風に言っていただけるなんてすごく嬉しいです…!!こちらこそ本当にありがとうございます(;o;)♡ (6月4日 23時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
Sae - これ神作ですね…!!いつも癒やされてます!!本当にありがとうございます〜♡ (6月4日 22時) (レス) @page34 id: ce5901011e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月5日 15時