君と話したかったんだ ページ29
- S.N side -
『北海道だよ、凪くん！』
「Aさん嬉しそう」
『ふふ、だって嬉しいもん』
到着しただけで嬉しそうに笑うAさん。
身長のせいもあって機内はかなり窮屈で、こちらは正直移動だけで疲弊していたけれど。
彼女の笑顔を見れば、それもどうでもよくなった。
「また移動…」
『北海道はどうしても移動時間が長くなっちゃうね』
「もうホテル行きたい…」
『ずっと窮屈そうだったもんね』
「足が長いと不便」
『あ、じゃあ足が長い凪くんに後でいいものあげる』
「うん？」
『だからもう少し頑張ってね、凪くん』
「んー、頑張る」
『ふふ、偉い偉い』
そう言ってニコニコと笑いながら俺の頭を撫でる彼女の小さな手に、胸がきゅっと締め付けられる。
本当はこの手も、笑顔も、彼女自身をも独り占めしたいのに。
みんなに優しい彼女はクラス内でも男女問わず人気だからそれが叶わないことが悔しい。
「凪くんはAに甘えすぎ！ぶりっ子しすぎ！」
「えー何のこと？」
「Aもすぐ甘やかすから寝太郎が調子乗るんだよ」
『あはは、そんなことないよ。ね、凪くん？』
「そうだよ。高橋さんは余計なこと言わないで」
「ほんっと腹立つ寝太郎」
「すぐ喧嘩売らないの、香奈」
そんなやり取りを見ながらケラケラと笑う彼女を抱きしめたくなったけど、我慢した自分を褒めてあげたい。
「…どうしたら俺だけ見てくれんの」
思わず小さく呟くけれど、友達とのお喋りに夢中な彼女にその声が届くことはなかった。
その日は少し観光してから、再びバスでホテルへ移動することに。
その間、自分にしては珍しくずっと考え込んでいた。
鈍感であろう彼女にどうしたら気持ちが伝わるのか、男として見てもらえるのかを。
しかしその途中でふと肩に重みを感じて、思考停止する。
「…え」
『……』
「…た、田中さん」
「ん、何？…あら」
「え〜Aが寝るなんて珍しいね、可愛い」
重みを感じた方を見てみれば、俺の方に頭を預けてAさんが眠っていたのだ。
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chiito(プロフ) - Saeさん» Saeさん、はじめまして！そんな風に言っていただけるなんてすごく嬉しいです…！！こちらこそ本当にありがとうございます(;o;)♡ (6月4日 23時) (
レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
Sae - これ神作ですね…!!いつも癒やされてます!!本当にありがとうございます〜♡ (6月4日 22時) (レス) @page34 id: ce5901011e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：chiito | 作成日時：2023年4月5日 15時
