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見るはずのなかった景色で ページ12

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たどり着いたのは屋上だった。
凪くんは手を離すと座り込み、自分の隣をトントンと叩いた。
ここに隣に座れという意味だろう。


『あの…凪くん、本当にありがとう』
「ん?何が?」
『さっきの…すごく助かった』
「あぁ、どういたしまして?」


凪くんはそれ以上は何も言って来ることも聞いて来ることもしない。
静かな時間が流れるけれど特に気まずくなることもなく、むしろ気持ちが落ち着いていく。


「んあ」
『どうしたの?』
「そういえば今は大丈夫?」
『え、何が?』
「一応、俺も男じゃん。今2人きりだと思って。怖くない?」
『うん、凪くんは怖くないよ』
「そ?ならよかった」


やっぱり凪くんはそれ以上は触れてこない。
そんな彼の優しさに救われた。


「ねむ…」
『ふふ、天気もいいから暖かくて気持ちいいもんね』
「んー、それもあるけどAさんが隣にいると眠くなる」
『え、私?』
「うん、アナタ」


そう言って仰向けに寝転んで目を瞑る凪くん。
どうやら今からお昼寝をするらしい。


『私関係なくない?凪くんは1年生の頃からよく寝てるって聞いたけど』
「あると思う、たぶん。去年よりもよく寝てる気がするし」
『けど私が原因かは分からないでしょ』
「なんか…いいにおいすんの」
『におい?』


そう言うと彼は先程まで閉じていた目を薄らと開き、私の方に手を伸ばして髪を掬う。


「シャンプー、かな?」
『シャンプー?』
「うん…。だから…いい感じに、眠れる…」


もうムリ限界、とだけ言い残すとすぐに寝息が聞こえる。
見慣れたはずの彼の寝顔に、何故か胸がきゅっと締め付けられた気がした。

そのあとは屋上から景色をぼーっと眺めて過ごしているうちに授業終了のチャイムが鳴る。
そういえばと思い出してポケットに入れていたスマホを開けば恐ろしい件数の連絡が入っていた。
マナーモードにしていたから気付かなかったらしい。


『やっちゃった…』
「んん…どした…?」
『友達から心配の連絡が来てた』
「えっと…名前分かんないや、いつも一緒にいる子たち?」
『そう、早く教室戻らなきゃ』
「じゃあ行こっか」


そう言うと凪くんがいつも通りのそりと起き上がる。


『凪くん、ありがとう』
「Aさん、律儀だね」
『本当にそのくらい助かったの』
「そっか」


そんなやり取りをして教室へ向かった。


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chiito(プロフ) - Saeさん» Saeさん、はじめまして!そんな風に言っていただけるなんてすごく嬉しいです…!!こちらこそ本当にありがとうございます(;o;)♡ (6月4日 23時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
Sae - これ神作ですね…!!いつも癒やされてます!!本当にありがとうございます〜♡ (6月4日 22時) (レス) @page34 id: ce5901011e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月5日 15時

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