俺らが紫耀を守るから26

初めて友達ができた日３ ページ44

それから僕の生活は少しだけ変わった。


学校では相変わらず一人だったけど、今日はダンスの日だと思ったらそんなの苦じゃなかった。

放課後は走って家に帰ってダンススクール。


スクールでは少し友達もできたし、とにかく踊っている時が一番楽しかった。




紫「行ってきまーす」

マ「紫耀待って！」

紫「ん？なにー？」

マ「今日ね、ダンススタジオが使えないらしくてレッスンお休みだって」

紫「…え」



僕の唯一の楽しみ…

そっか。今日行けないのか。



紫「…わかった。いってきます」

マ「行ってらっしゃい。あっ、またご飯温めて食べてね」

紫「うん」



ダンススクールに行けないだけで気分はかなり下がる。
一週間に一度の楽しみなのにな。









紫「はぁ…」



放課後になってもしばらく席に座っていた。

みんなバタバタと出て行って教室には一人だけど。





ガラッ

先「あら平野くん？一年生はもう帰る時間でしょ。早く帰りなさい」

紫「あっ、はい。さようなら」

先「さようなら」




グラウンドでは上級生たちが授業でサッカーをしている。

その端を背中を丸めながら抜けて、いつもの通学路を一人歩く。



紫「帰っても一人…。ダンスもないし。…帰りたくないな」



ママは仕事でいないし、帰っても寂しいだけ。

足を止め、よく立ち寄る公園に入ってブランコに座った。



キィキィ…という音が寂しく響き渡る。




紫「…」




ぽたっ




紫「え？」




ぽたっ…ぽたっ…




紫「うそっ！」



なんでこんな気分の時に雨降ってくるの…

慌てて立ち上がり、そばにあった遊具のトンネルに入った。




紫「濡れちゃった……『おい』…(バッ)えっ！！」




突然声がして驚いて振り向いた。



「お前誰や」

紫「えっ、、えっと…」



そこにいたのは同い年くらいの男の子。

丸っこい目で僕を睨んでいた。



「ここは俺の場所や。勝手に入ってくんな」

紫「ご、ごめんなさい…。雨降ってきたから…」

「傘ないんか？」

紫「…うん」

「じゃあ走って帰りや」

紫「…家に誰もいないし……帰りたくなくて…」

「…」



僕がそう言って俯くと、無言になったその子は何かを差し出してきた。



紫「…え？」

「ん！」

紫「…あっ、タオル…？…でも…」

「それじゃあ風邪ひくやん。ええからほら！」

紫「…ありがとう」



無愛想な態度だけど、今の僕にはすごく嬉しかった。

タオルはふわっと暖かくて。
なんだか泣きそうになった。

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