【A3!】同期と先輩【茅ヶ崎至・卯木千景】

20 ページ20

公演DVDを見始めて少し経った時、茅ヶ崎の携帯が鳴った。そして会話を終えると、千景さんに帰ってこいと言われたらしく文句を言いながら帰った。本当は駅まで送るつもりだったんだけど、玄関まで行ったら「ここまででいいから」と言われてしまった。

千景さんが出発してから明日で1週間。上司からの嫌がらせはあるが、それも含めていつもと同じような生活。何にも変わらない。今回の千景さんの出張は、劇団もあるためなのか1週間。明日で帰国だ。それまでに、とりあえず今ある仕事は終わらせよう。

そして今日は新規契約と契約続行の手続きのお願いをしに、外回りに行く。電話の段階では2社とも良い印象だったため、必要以上に気を張らない。

「あ、立花。お前、今から中野さんところに行くんだろ？」

持っていく書類を鞄に入れながら、準備をしていたら上司が後ろにいて声をかけられた。中野さんとは契約続行手続きのお願いにこれから行く、営業先のお偉いさんの名前。

「はい」

私は素っ気なく返事をする。もちろん、手は止めるけどね。

「あそこは長い間契約をして下さっている、とても大切なところだ。だから頑張れよ」

そうニヤニヤしながら言われた。何か隠してる気もするが、流石に営業先にまで手をまわされてたら私も仕事が出来ない。そこまではしないだろうと思いながら、「ありがとうございます」と返事をすると上司は自分のデスクに戻っていった。

「はじめまして。私、〇〇商事株式会社の立花と申します。本日はお忙しい中、お時間を取っていただきありがとうございます」

「いやいや。こちらこそわざわざここまで、足を運んで下さりありがとうございます。鈴木と申します。本日はお願い致します」

新規契約先の鈴木さんの第一印象は、好青年。人の裏とか見抜く腕はないから分からないけど、見た目だけで言えば茅ヶ崎と同じ感じ。

「…わかりました。前向きに検討させて頂きます」

「ありがとうございます！それでは決まりましたら、名刺に書いてある連絡先に連絡をお願い致します」

案外、あっさり決まった。本当はお偉いさんも居て即決らしいが、運悪くその人が不在なため後日連絡となったらしい。鈴木さんが私が会社を出るまで着いてきたので、その時に聞いた。因みに同い歳だということも分かった。ま、だからと言って何かある訳でもないが。次は中野さんのところだ。気を引き締めていこう。

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す