#3 ページ36
途中、千冬がトイレに行くというので待っていると
規則正しく並んだお面が目に入った。
惹かれるように屋台の前でお面を見上げる。
『…』
わたしは昔からこういうのが好きだったりする。
だけど、中3にもなってお面なんておかしいよね、
と、諦めるが視線はそのお面を捉えて外さない。
(千冬とお揃いでつけたいなぁ…)
なんて思っていると、
いつの間にか戻ってきていた千冬が屋台の人に言った。
「おじちゃん!あのお面、ひとつずつちょーだい!」
「お?カップルかい?嬢ちゃんべっぴんさんだねぇ、にぃちゃんやるじゃねぇか!」
「だろ?俺の自慢の彼女!」
『…』
千冬の発言にこっちが照れてくる。
「ハハッ、よし、嬢ちゃんの分はサービスだ!」
「え、まじ?やった!」
「にぃちゃん、ちゃんと幸せにしてやれよ?」
「当たり前!」
「はいよ、まいどあり!」
「ありがとう!」
そんな会話を終えた千冬がお面を渡してくれる。
「はい、A。」
そこにあったのは、先程まで見つめていたミ〇ーちゃんのお面。
それを素直に受け取る。
『…ありがとう。』
「どういたしまして!まぁ、Aのはタダだったんだけどな。」
そう言った千冬の手にはお面がもうひとつ。
ミッ〇ーマウス。
千冬はそれをつけようとして苦戦している。
「あー!前髪おろしてくれば良かったかな、」
って言いながら。
それを黙って見つめていたら
つけ終えた千冬がこちらを見て言った。
「Aつけねぇの?つけてやる。貸して!」
わたしの手からお面を受け取った千冬は丁寧につけてくれた。
つけ終えるとお面をつけたわたしを見て、
「へへっ。お揃い。」
って笑うから、
愛おしさが溢れてくる。
気付けばわたしは千冬の唇に自分のソレを重ねていた。
「…」
固まっている千冬をみて我にかえるわたし。
……!!!
わ、わたしは今、何を…!
こんな人混みの中で…!
か、身体が勝手に…!
自分の身体が勝手に動く訳などないのだが
まさにそんな感じだった。
顔に熱が集まる。
穴があったら入りたい。
『ち、千冬!ごめん!』
「何コレ。すげー嬉しい…」
『え、』
と、顔を上げたのと同時に降ってきたのは、
今度は千冬からのキス。
『…』
何コレ…凄く嬉しい…
「な!」
心の声が漏れていたのか
顔に出ていたのか、
満面の笑みの千冬がそこにいて。
そして、わたしの手をとって歩き出す。
「次、アレ!行こ!」
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作者名:Tmwixx | 作成日時:2022年10月10日 9時