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「あ、」
ページを捲った際に挟まっていた栞がひらりと床に落ちる。それを拾おうとかがんだタイミングが山本さんと一緒だった。栞に伸ばした手が重なる。
「あっごめんなさい。素敵な栞ですね」
「いえ、あの、ありがとうございます」
こんな行動や言葉の端々からも山本さんの優しさが伝わる。そんでもって一挙手一投足が可愛い。
そんなことを考えていれば、自然に手を取られて思わず固まった。
「戸代さん手ちっちゃいですねえ」
「そ、そうですか? 山本さんの手が大きいんじゃ」
「そうかなあ。自分じゃわかんないです」
そのままするりと指の間に指が入り込む。
恋人繋ぎみたいな格好になって、私は目を瞠った。
もう! ろくな青春を経験してこなかったせいで、こんなんですぐ顔が赤くなる!
単純もいいところだ。山本さんだってきっとそんな気はなくて、ただ手が気になったから握っただけで……。最高潮にテンパる私に、山本さんはトドメの一言を囁いた。
「Aさん、」
「へ!?」
「……って、呼んでいいですか?」
「えっ、いや、えと、」
名前を、呼ばれた。初めて、しかも真剣に。
どうしたらいい。どんな反応をしたらいい。
平常心でいるのなんか無理で、片手を繋がれたままの私には、赤い頬を誤魔化す為に俯く事しかできない。
「へへ、ちょっと意地悪しちゃいました。Aさん、また可愛いって顔したから。……僕、可愛いより格好良いって思ってもらえるように頑張りますから。楽しみにしていてくださいね!」
「えっと、……え?」
「あ、でもAさんって呼びたいのはホントなので! これからAさんって呼ばせてください。」
「は、はあ……」
流されるまま頷きを返す。
彼は一度ギュッと手を握るとすぐ離してくれた。
そうして、落ちたままだった栞を机上に置いて、元のソファーへと戻る。何事もなかったかの様にニコニコ笑顔を見せる山本さん。
……その後ろに、小悪魔を見た。
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れのん - 短編集完結、お疲れ様です〜!!kwmrさんのお話もありがとうございました、とっても素敵でした…!!kwmrさんらしい優しさにドキドキしました…!!!長編も楽しみに待ってます!ありがとうございました!! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 90e7c9629e (このIDを非表示/違反報告)
三星(プロフ) - れのんさん» こんばんは。コメントありがとうございます! 続きが遅れまして申し訳ないです。とても楽しいリクエスト、嬉しかったです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2018年10月16日 22時) (レス) id: 49fd1affdc (このIDを非表示/違反報告)
れのん - 更新ありがとうございます〜〜!!現段階でもすごくドキドキします……!!続き待ってます!! (2018年10月12日 23時) (レス) id: 90e7c9629e (このIDを非表示/違反報告)
れのん - 三星さん» ありがとうございます!!いつまでも待つのでゆっくり更新なさってください。 (2018年10月10日 21時) (レス) id: 90e7c9629e (このIDを非表示/違反報告)
三星(プロフ) - れのんさん» れのんさんこんばんは。コメントありがとうございます〜〜。嬉しいお言葉、幸せです。kwmrさんのリクエストもありがとうございます。次回更新時に書きますのでお待ちいただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願いします〜〜 (2018年10月10日 17時) (レス) id: 49fd1affdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三津 | 作成日時:2018年9月14日 17時