易しい知恵熱【Q.K】

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　あの時、Aちゃんがあまりにもガチガチだったから、ナイスガイの須貝って呼んでくれてもいいよ？ なんてジョークのつもりで言ったんだけど。
あくまで真面目なこの子はそれを真に受けたらしい。ずっとナイスガイさんって呼んでくれている。


「須貝でいいよ。あ、Aちゃんがその気なら名前でもいいけど？」

「す、須貝さんとお呼びしてもいいんですか……！？」

「あ、名前の方はスルーなのね……。どーぞ」

「……須貝さん！」

「はーい」


　返事をすれば、キラキラと目を輝かせて喜ぶAちゃん。なんかワンコが遠くの飼い主を見つけた瞬間みたいだ。尻尾が見える、尻尾が。


「うん、いいなこっちの方が。仲良さそう」

「ええっ、そんな、仲良しに見えても大丈夫ですか！？」


　私なんかが！ って副音声が聞こえて、何をそんなに気負っているんだろうと思う。
彼女の中では、自分はファンである、という負い目があるんだろう。だけど、それでも。AちゃんはもうQKのメンバーだ。

　そういやこの間河村に、Aちゃんは友達がいないって暴露されてたっけ。
大学から上京してきて、遊びに行ったりするような友達がいないと嘆いていた。


「でも、……須貝さんのお友達になると楽しそうですねえ」

「そう？ まあ飲み会には顔出すけど。あとメシとか買い物とか行ったり。それくらいの特典しかねーよ？」

「羨ましいレベルです……」


　ギリ、と歯ぎしりが聞こえそうなくらいに眉根を寄せて、Aちゃんは虚空を睨んでいる。
こらやめなさい、眉間に皺寄せると癖になるわよ！

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