5.溜息 ページ6
『まっ、お嬢さんがどれだけ嫌だーって言っても勝手に着いて行くけどね!
大丈夫だってー! 殺さないからさぁっ! 人間とかの色々な事知りたいだけだしね』
「…はぁ……」
思わず額に手を添えて溜息を吐いた。
余りにも軽く言われたから実感が湧かないけれど、今この影は物凄く物騒な事を言った気がする。
これは…何を言っても無駄だろうなぁ、と半ば諦める。
『いーじゃんか! オレの姿はお嬢さん以外には見えないんだし』
「…そうなの?」
『ウン』
そうか、なら良い……って良くも無いだろう。
だが、このままでは埒が明かない。
この飄々とした態度からはあまり害は感じられない。
何より、私も早く家に帰って祖母が朝ご飯を作るのを手伝わなければならないのだ。
因みに私は祖母と二人でこの緑豊かな田舎で暮らしている。
父と母は仕事で遠方にいて、一年に数回程しか会う機会が無い。あと学校はここから何駅か電車に乗って通っている。
いつもならばもう家に帰っている時間だ。もしかしたら祖母が心配をしているかも知れない。
「もう分かったよ! 勝手に着いて来ればいいじゃないっ
でもしばらくして満足したらちゃんと離れてよ?」
そうヤケクソになって告げると影は『オォッ』と声をあげて口を三日月型に吊り上げた。
『分かった! じゃあ改めてよろしく頼むよ、お嬢さん。
人間の色々な事、教えてね?』
「…はぁ」
夢だったら心底嬉しいな、と本気で考えた。
しかしまぁ夢じゃないな、という考えに至り、またもフゥ…と止まらない溜息を吐く。
『アッ、溜息をついたらシアワセ? っていうのが逃げるとかなんとかっていうのを何処かで聞いたことあるよ!?
それって逃げちゃっても大丈夫? 捕まえられるモノなの!?』
「…え」
そこからか、とツッコミを入れたくなる。
…何だか、先行きがとても怪しいような。
これから大変そうだ。
『まぁ離れる予定は無いんだけどね』
私はこの時影がそう小声で言った言葉に気付かなかった。
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ソルジャードリーム - 更新楽しみに待ってます!( ☆∀☆) (2015年5月9日 11時) (レス) id: 5aa7608348 (このIDを非表示/違反報告)
なのん - 更新早くーーー!面白すぎ!!つづきがきになる(>∀<) (2015年2月8日 8時) (レス) id: 2357c02e3c (このIDを非表示/違反報告)
悠 - この小説良いですね!更新頑張って下さい!!応援してます!! (2014年9月30日 21時) (レス) id: 266b54b8e8 (このIDを非表示/違反報告)
のほほん族(プロフ) - 私、この作品好きです。更新頑張って下さいね(^o^) (2014年9月27日 22時) (レス) id: c0269819b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆粒 | 作成日時:2014年9月16日 7時