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「‥カンさん、僕がここにいる理由知りたがってましたよね。」
「それが何か？」
「こういう事から彼女を守る為です。僕たちの、アイドルという職業は信用と信頼の上で成り立っているものなので何かあってからでは遅いんですよ。」
「それは‥僕がAさんに危害を与えるとでも言いたいんですか？」
「‥事実だろ。じゃああんたさっき彼女の控え室で何してた？」
最近ヨジャアイドルばかりを狙うスマホやタブレット、言わば情報端末などの盗難被害が多発していたらしい。専ら個人情報漏洩目的の為だろう。俺もこの話は昨晩ジンヒョンから聞いたばかりだ。そしてマネヒョンによると、盗難が起こる現場に必ず居て、目的のアイドルと接触を図る、今目の前にいるこの男こそ怪しい人物なのでは、と会社の方でも話が進んでいたようだった。
「何を言い出すかと思えば‥それはあまりにも失礼じゃないですか？」
「今ここで電話鳴らされて、困るのはそっちだろ。あんたならこの意味分かるよな。」
「なっ、！？」
追い討ちをかけるように俺は自分のスマホを取り出す。すると分かりやすく顔を青ざめさせ、足早に現場を立ち去ろうとするがもう遅い。スタジオの入り口でマネージャー、そして警察が待ち構えている。
『なんで警察まで‥どういうこと？』
いつも撮影時は現場に携帯を持ち込まないA。そこを利用しGPSをオンにしたダミーのスマホを用意し、前もってAのスマホとすり替えておいた。今警察に事情聴取されている、男の手にあるそれこそが決定的な証拠だ。あいつが控え室に入る瞬間もマネヒョンがきっちり押さえている。
「要するに、気に入った女の弱みでも握って、付け入ろうって魂胆だったんだろ。」
『そんな事になってたんだ‥オッパ達まで、』
「大事な撮影の前にAには詳しく言わない方が良いだろう、って。まあ無意味に終わったけど‥」
結局Aを怖がらせてしまった。放心状態の彼女に大丈夫か？と声を掛けると意外にもケロッとした表情で俺を見上げる。
『びっくりしたけど、ユンギが居てくれたから怖くなかったよ。』
ありがとう、と俺に飛びついてきたAを慌てて受け止める。
「今日はよく抱きつくな。」
『うん、自分の感情に素直になるって決めたの。』
「じゃあこれは何のハグ？」
『ユンギ大好きだよ、ってハグ。』
未だ騒つくスタジオ内で一際輝くAの笑顔。この先も、この笑顔を守る為なら俺は何だってやると自分に誓った。
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作者名：mitsu | 作成日時：2021年7月19日 23時
