‥‥ ページ37
-
「とんでもない。そう言えばマネージャーさんの姿が見えないですけど‥なるほど、その代理人としてSUGAさんが？」
「マネージャーは少し遅れて来ますよ。それに僕は自分の意思で、理由があってここにいるんで。」
「是非その理由とやらを聞いてみたいものですね。」
売り言葉に買い言葉とはまさにこの事だな。互いに視線はAを捉えたまま、水面下で静かなる戦いを繰り広げている。暫くして「機材調整も兼ねて休憩入ります！」というスタッフの声に現場に張り詰めていた緊張の糸も切れ、同時に俺たちの戦いも一時休戦を余儀なくされた。
・・・
軽くメイク直しを終えたAが当たり前のように俺の元にきて、俺だけに見せる表情で俺の名を呼ぶ。この事実だけで胸がいっぱいになったところに、また胸元に感じる衝撃と彼女の体温。
「もう充電？」
『うん、人がいっぱいでちょっと疲れちゃった。やっぱり一人での撮影って慣れないね。』
気が緩んで眠気に襲われてるのか、長い睫毛をぱしぱしさせながら唇を尖らせてる姿も可愛くて仕方がない。Aと出会ってから彼女への感情のタガが外れっぱなしだと改めて実感する。「見ててやるから頑張れ」『それはそれで緊張するもん』「何でだよ」と戯れあっていると、あの俺が忌み嫌う声によって一気に現実に引き戻された。
「お楽しみ中のところすみません。ちょっとAさんお時間宜しいでしょうか？」
それにしてもこいつは棘のある言い方しか出来ないのだろうか。戸惑いながらも慌てて口を開こうとしたAを半ば強制的に自分の背に隠す。
「マネージャーが来るまで彼女の事は僕に一任されているので、何かありましたら僕が聞きますよ。」
「いや個人的なことなので出来ればAさん本人とお話したいのですが、」
「だったら尚更、はいそうですかとはいきませんね。」
「‥ 心外だなあ、そんな警戒しなくてもいいじゃないですか。あれ、もしかしてお二人付き合ってらっしゃるとか？」
下卑た笑みを浮かべ、周りに聞こえるようにわざと大きな声で投げかけられた言葉。案の定何人かチラチラとこちらを見やる視線。それらに居た堪れなくなったのか、俺の背中に張り付き、シャツを掴んでいたAの手が震えている。
目の前の男はそんな彼女の様子にも気付かない。どこまでも自分本位なこいつの幼稚性には虫唾が走る。もういいだろ、これ以上こっちが下手に出てもつけあがるだけの人間って事がはっきり分かった。
→
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1729人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mitsu | 作成日時：2021年7月19日 23時
