56._三日月 ページ6
『あ、そうだ。ヒソカもうご飯は食べた?』
「いや?」
『じゃあ食べに行こう。いいところがあってね』
メンチさんとはすっかりメル友である。次向かう場所を教えるとその都度付近の美味しいお店を紹介してくれる。ついでに珍味らしい動物や植物も教えてくれるのだが、明らかに人の立ち入るような場所ではないのでそれはまたの機会にしている。……いつかはちゃんと説明して食べにいかないとな。
ここ天空闘技場付近のお店もしっかりと教わっていた。…メンチさんのお陰で料理には詳しくなっているな。
「………」
『ヒソカ?』
ヒソカは私の言葉に驚いていた。それから頬を上げる。瞳が三日月のように歪んだ。
『あ、流石に着替えて…』
ヒソカの腕が私の頬を通りすぎていって体が引き寄せられる。…胸板に頬をつける訳にもいかずなんとか背伸びをしてヒソカの肩に顔を出した。
いや、それでも体はヒソカの裸体に触れる。…手を回すのもなんだかなのでさ迷った結果下に下ろす。……ヒソカの体は熱い。シャワー後で冷えていそうなものなのに。
「…だからボクはキミのことが好きでたまらないんだ」
『……ひ、ひそか?』
一体どうしたのだろう。顔を見ようにも引き寄せられているため見れない。前後の出来事を考えるが……食事に誘っただけだよな。
「A」
『…なに?』
「もし負けるようなことがあればAに勝ったやつはボクが殺す。全員」
え、
『…それ、罰ゲーム?』
私に勝った奴が死んでいけば私が負けて悔しくて逆恨みしたみたいじゃないか。
「どうとっても構わない。でもAなら負けることはないだろう?」
…どうしてそうみんなプレッシャーをかけるかな。期待は嬉しいが捉えようによっては枷だ。…期待に応えられなかった瞬間、その枷に鎖が繋がれるのだ。
「Aはもっと自分が強いことを自覚したほうがいい。…その方がもっとキミは強くなる」
自分の力量は把握しているつもりだが、ヒソカの目には違って映るらしい。…ヒソカにそう言ってもらえるのは嬉しいことか。
『…君の気持ちは分かったよ。分かったからそろそろ離してくれるかい?』
ヒソカの腕が緩む。私はそろり、と抜け出した。ヒソカの体温はすっかり私に移ってしまった。…しかし、いい筋肉である。
「すぐに着替えるよ」
『うん。廊下に出てるね』
着替えをじろじろ見るのは憚られる。
私は廊下に出て暖まった体を少し冷やした。
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ソマリ(プロフ) - すごく面白いです!読んでる間時間を忘れてました!続き楽しみにしています。 (2021年2月26日 13時) (レス) id: 0472de010a (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。まだ確定ではないのですが長らくお待たせしているので投稿しました。そのうち勝手に編集するかもしれないデス。 (2021年2月12日 0時) (レス) id: 74382eb008 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - いつも大変お世話になっております。ついにヨークシン編へ!!わが最推しのクロロの活躍が待ち遠しいです。作者様もどうかお体にはお気を付けて、また続きを恵んでくださればと思います。お待ちしております!! (2021年2月6日 0時) (レス) id: c902458bf8 (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。いよいよヨークシン編に入ります(まだ何も書いてないけど)。ここまでくると以前と言ってたこと違う、みたいなのがあるかもしれません(私は結構忘れてます)。指摘して下されば直します。優しく指摘して下さい(フリではないです)。 (2021年1月15日 19時) (レス) id: ec296045c3 (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。題名が被ってるときはわざとの時と忘れて使っている時があります。基本は被らないように頑張ってます。あと、題名で中身が丸わかりにならないように頑張ってたりします。お陰で変な題名が多くなってしまった。 (2021年1月13日 23時) (レス) id: ec296045c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:JRPG | 作成日時:2020年12月9日 0時