参拾八 ページ38
『……少年、行くぞ』
「へ、?あ、ちょっと!」
少年の手をそのまま引っ張る。
「急にどうしたのAさん!」
『………』
「初対面でそこまで拒絶されると傷つきますね」
『"どの"口が言う』
そんな事微塵も思っていないでしょう。
そう返せば男の目が鋭いものに変わった。
「……どうしてそう思うんですか?誰だって、なにもしてないのにいきなりそんな態度を取られたら傷つきます。それも貴女のような素敵な女性なら尚更ですよ」
声は穏やかだ。表情も、目尻を下げ困ったような、本当に"傷ついている"ようなもの。…けれど私にはそんなもの通用しない。
影は本質を写す。
その者の本質を。
「Aさん!少し落ち着こうよ!安室さんは悪い人じゃないから」
『良い悪いは別にいいんだ。人の本質なんて見飽きてる。けど、そうじゃない。今は君が居るだろう』
「え……ボク?」
少年は目を丸くする。そう言われるとは思っていなかったらしい。
ああ。人の中身なんてどうでもいい。善人の顔ほど、腹のなかは真っ黒だ。そんなものは今さらどうということはない。だが、恩人が関わるなら別。
『私は人間の本質をある程度見ることができる。この男は、君に危害を加える可能性がある』
「…………は、」
『こういう"不安定"な人間が…一番危ないんだ』
「!」
少年を握る手を強める。
…影に定まりがない。幾重にも重なり、濃い。深い闇だ。お兄さんと少し似ている。もしかしたら境遇が同じなのかもしれない。この男もなにやら"偽って"いるようだから。
「…不安定…ですか」
『……』
「……本質を見ることができる、というのはあながち嘘ではないようですね」
「!安室さん」
「ですが、僕がコナンくんに危害を加える…というのはあり得ません。コナンくんは大切な…日本国民だ」
……。偽りではない。
私はそっと左腰へと伸ばしかけた手を戻す。少年の手も解放した。少年は未だに驚いた顔を戻さない。
「その様子からして…何やら事情があるようですね。よかったら僕にも話してくれませんか。僕にも手伝えることがあるかもしれませんし。どうかな?コナンくん。それと"Aさん"」
男の視線が少年へ向き、それから私へと向けられる。……少なくとも罪人の類いではないらしい。だからといって信用には値はしない。
それに、悪人でないのなら…尚更巻き込むわけにはいかない。
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ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年6月21日 12時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは!"浮世離れの今日"を見させていただきました!好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります!技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです!!続きが気になるー!楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年9月15日 21時