浮き世離れの今日【名探偵コナン×鬼滅の刃】

参拾伍 ページ35

先程の言葉…そう聞いて何人かの表情が怖いものになる。オレも突然のカラスの到来で吹っ飛んでいた感情が戻ってくる。

…Aさんの言葉は容赦がなかった。

Aさんの話を聞いて、"鬼"はそれこそ怪物のようなものであることは分かる。"人間"が太刀打ちできるようなものじゃないと。…それでも、何か出来ることはあるはずだと思う。

鬼は日の光が苦手なんだから人工太陽の照明は使えるはずだし、今の藤の花だって……。

だけどAさんのそれは…拒絶だった。鬼に関わることへの拒絶。

オレたちを気遣ってのことなのかもしれない。…だけど、ショックだった。まだ出会って二日も経ってないけど、オレはAさんを信用していた。彼女の人柄もそうだけど、何より、Aさんは鬼よりも人を優先した。それもオレたちの世界の人間を、だ。

『さっき私は皆さんに出来ることはない、と言いました』
「………」
『それを訂正します』

その言葉を聞いて顔をあげる。…じゃあ、

『皆さんは藤の花を身につけるようにしてください。皆さんの大切な人にもそうしてください』

…Aさんの言葉はやはり冷たいものだった。それは結局、"オレたちは戦うな"ということ。

「……貴女ね…」

静かに低い声で話し出す佐藤刑事。…完全に怒っていた。

『はい』
「確かに私たちは"弱い"し貴女にとってお荷物かもしれない。…でも、民間人が襲われたのに警察が黙って見てるなんて、そんなこと出来るわけないでしょう！」
『……』

佐藤刑事の声が取調室に響く。…"弱い"と言われたことを根に持ってるみたいだった。

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